全ての理不尽が詰まった道~Cabanaまで

Pallasca~Cabana
9/14 (482days)

9/14
牢獄の様なオスペダヘ(安宿)のベッドはダニの巣窟となっており、とてもその上で眠れたものではなかった。
結局、部屋にあった机の上に自分のマットと寝袋を敷いて一夜を過ごした。

ケチって安宿に泊まるなら、金を出して相応のところに泊まるか、やはり自分のテントが一番の快適空間だという良い勉強になった。
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出発する直前、オーナーの親父さんは私を別室に案内し、大統領と一緒に写った自分の若かりし頃の写真を見せてくれた。
カラー写真黎明期の頃のものらしく、ぼやけた写真の中ではパレードでごった返す人と、大統領と満面の笑みでがっちりと握手をした青年が写っていた。

「これはどこで撮ったものなの?」と尋ねると、「この町、Pallascaだ」という。
この寂れた町にも大統領が訪れるとは・・・ペルーにとって、大統領というのは特別であり、決して遠くもない存在なのかもしれない。
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そしてPallascaの町の出口から続く道を見て、朝からガクッと落胆してしまった。
昨日MollepataからPallascaまで続いていたアスファルト舗装は途切れ、未舗装路が再び始まったのだ。

あのとんどもない坂道の区間ならさすがにアスファルト舗装もするけれども、こんな山間部の田舎ならそれ以外の道はほったらかしになるか・・・
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斜度が思った以上にキツイ。
それに輪を掛けて、前日の走行が想像以上に身体に負担を掛けていたのか、少しでも斜度がきつくいと上り切れず、自転車を押して歩くことを余儀なくされた。
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標高は3300メートルを超えてきた。
山肌に沿って走り、対岸に見える山へと伝っていくいつものパターンなのだろうが、また前日の様なとんでも九十九折れの道が見える。
まさかあれを走る訳じゃないだろうな・・・
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標高3300メートルから道は下りに転じ、対岸の山肌に割と大きめの町が見えてきた。
地図で見る限りHuanduvalという町だろう。
到着する頃には11時過ぎになるはずなので、あそこで昼食休憩を取ろう。
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そんな事を考えながら下っていると、突然自転車がグラっと大きくバランスを崩し、あっという間にズザザザッ!と横たわった自転車と共に地面を滑る自分がいた。
タイヤが砂に取られ、スリップして転倒したのだ。

余りに突然の事で地面に伏して数秒キョトンとしたが、ハッとしてすぐに自転車を起こす。
その横を、正面カーブから現れたバイクが横切っていった。
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まずは自転車を確認し、異常なし。
次に自分の体を確認し、怪我も痛みもなし。

この旅行で派手に転んだのは、今回が初めてだ。
ホッとした安堵の感情の次に沸き上がったのは、怒りの感情だった。

どうしてこんな未舗装路が続くのか?
アスファルト舗装にしないまでも、何故こんな砂と砂利にまみれた道を放置するのか?
恐らくペルー政府にしたってどうしようもないことなのだろうが、とにかくこの時はただただイライラが募っていった。

更に下ると、そこには道路を分断する川が。
靴を脱ぎ、サンダルに履き替えて手で押して進むしかない。
最後、川から道路に乗り上げる時、川底の石が引っかかって思うように進めない。

「なんだってこんな道の状況を放置してんだ!この国大っ嫌いだ!」

断崖絶壁に一面の砂利と巻き上がる砂埃、道を分断する川・・・
私には、この道が全ての理不尽を詰め込んだもののように感じられた。
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そして11時過ぎ、Huandvalの町に到着。
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町の入り口にいた3人の親父さんに、「中央広場はどっち?」と道を尋ねると、その後の流れで「どこから来た?」という話になった。

ほとんど恒例の会話なのだが、親父さん達は大層驚き、そして最後にはジュースやスナック、果物をお土産に持たせてくれた。
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そして親父さん達に言われた通りの方角に進み、中央広場に到着。
レストランの看板を発見したが、話があまりよく理解できない。
何度も聞き返してみると、どうやら13時から開店らしい。

しかし、どうやらご厚意で早めに開けてくれるのか、「ここに掛けなさい」と奥の食卓に案内された。
出された昼食を食べ終わり、最初に言われた代金の6ソル(1ソル=34円。約200円)を払おうとすると、手を払って「いらない」というジェスチャーをする。

「言っただろ、13時開店なんだ。それより前の時間は代金要らないよ、タダだ。」
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この町に到着する直前、呪ってやろうかという程に憎くて仕方なくなり始めていたペルーなのに・・・
全く予想すらしていなかったペルー人の親切に、「Gracias(ありがとう)」の言葉しか出なかった。

旅行をしていると、こうした数多くの親切を受け取る。
決して経済的に豊かではないであろう人からも、受け取ることがある。
その度に、その国の事が少しずつ好きになっていく。
何だか、些細な事でイライラしていた自分の感情を、恥ずかしく思った。

Huanduvalの町を出てからも道は相変わらずの未舗装路で、状況は何一つ好転していない。
イライラはするけれども、それを抑えつつ、ゆっくりと進んで行く。
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断崖絶壁の上り坂を上り切った先広がっていたのは、どこまでも続くアンデス山脈。
前日から続く厳しい走行に対する、ちょっとしたご褒美のように感じられる、爽やかな風景だった。
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そこから下る事数キロ、思っていた以上に短い距離でCabanaの町に到着した。
時間にしてもまだ15時前で少し早かったが、身体に残る疲労を考慮し、この日は早めにホステルに投宿することにした。
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(走行ルート:Pallasca→Cabana)

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