さよなら、エクアドル

Zumba~Peru国境La Balza
8/30 (467days)

8/30

この日は遂に国境越えということで、6時前に起床し、準備を済ませて7時半前にZumbaの町を出発する。

ちなみに私の泊まっていたホテルの目の前にはエクアドル軍の基地があり、6時ちょうどになるとラッパが大音量が鳴らされ、軍人が大声で点呼を取っていた。
6時前に起きてよかった、と思いつつの出発だ。
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Zumbaを出るとまた未舗装路の道が始まり、標高1200メートルからガンガン標高を下げていく下り坂となる。

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谷底まで落ちれば再び上り返しで、えげつない九十九折を繰り返して上っていく。
前のエントリーでも書いたけれども、これ、国境を跨ぐ主要道路です。

この道を設計、建設許可した奴は本当に頭おかしいと思う。
これ、褒め言葉です。
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昨日の疲れが少しあるのか少しボーっとしたまま走るが、やはりこの道は走っていて楽しい。
正に「自転車で走って旅行している」ことを実感できる。

楽しい理由は前回に書いたけれども、恐らく道路の「色」も良いのだと思う。
いつも走っている時にこんなことは意識していないのだが、黒やグレーの舗装路だと、いくら景色の良い山や川を見ても、無意識の内にどこか違和感を感じているのかもしれない。

それがこの道の様な茶色や、自然な土色の上で見る風景というのは、空、山、道、全てに一体感がある。
自分が撮った写真を見返して見ても、それらが全て写るような構図で写真を何度も撮っている。
普段はアスファルトや電線が写らない様に撮る様にしているのだが、如何にこの道を走るのが楽しかったのかが、写真を見返してみて分かる。

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文句があるとすれば、意外と車通りが多い事と、殺人的な日差しによる大量の発汗だろうか。
特に汗に関しては結構厄介で、下り坂の最中に目に汗が入ってきたらそれはもう大変なことになる。
というのも坂道の斜度が半端ではないため、常にフルブレーキを強いられる。

そのため、片手を離して汗を拭うなどしようものなら一気に加速してコントロール不能になってしまうため、下り坂で目に汗が入ればもう諦めて、多少斜度の緩い所まで行って拭うしかない。
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途中の集落。
ここを過ぎればまた谷底まで下り落ちる。
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谷底まで落ちると沢が流れており、そこにフランス人カップル自転車旅行者がへたり込んでいた。
彼等は南米最南端のウシュアイアから出発し、これからコロンビアへ行くとの事。
この沢からZumbaまで、どうやらヒッチハイクで運んでもらう算段の様。相当に参っている様子だった。
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私はまだまだ先が長いため、「じゃ、頑張って」と言い、フランス人カップルと早々に分かれて出発する。

この沢からの初っ端の上り返しが、アホかと思う程の斜度だった。
写真は少し上ったところから撮ったもので、斜度が分かりにくいが、アホです、アホ。

車はまだ大丈夫だろうが、バイクなんかは少しでも操作ミスをすればウィリーしてひっくり返るんではないだろうか、という程。
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「日本から来た」というと、「TOYOTA!HONDA!NISSAN!HINO!」とやたら日本の自動車メーカー名を口にする南米人が結構いたりする。
もちろんこちらのスペイン語ボキャブラリーが少ないため、共通の話題をするために気を使ってくれている面もあるのだろう。

が、この道を走っていて、私は一つの仮説を立ててみた。
かつてこの道が開通した時代、この道を含めてエクアドルの激しい斜度の坂道を上り切ることができる国産車がなかったのではないか・・・。

開通から数年後、エクアドルに初めて日本車が持ち込まれてきた。
そして当時、その日本車のみが、この斜度を上り切ることができたのではないか・・・と。
それはそれは、当時のエクアドル人は驚いたはずだ。「おおおぉぉぉ!車がこの道を上った!日本スゲー!」、と。

それが現在のやたらと「TOYOTA!HONDA!NISSAN!HINO!」を連呼することに繋がっているのではないだろうか。
アメリカ人の「サムラーイ!ニンジャ!スシ!テンプラ!」みたいなノリで。

完全に私の妄想であり、馬鹿話ですが、そうだったんじゃないか、と思う程にアホな斜度だった。
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それでも、アホだと言える余裕があるレベルの道でよかった。
グアテマラの未舗装路は、「道に殺される」と恐怖する程のレベルだった。
それに比べれば、ここの道は自転車を降りて押す程の物ではなく、常時漕ぐことができるレベル。

難易度でいえば、グアテマラは最大値の星5つ中、マックス難易度の星5つ。
ここは一番きつい箇所でせいぜい星3つ、くらいだろうか。全体通してみれば星2つくらい。
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沢からの上り返しを上り切った所、Zumbaから18キロ走った所で軍の検問所がある。
ここで汗だくになった顔を洗うために水道を借り、ついでに「国境までまだ上りがあるの?」と聞くと、「もう一つ上った後、後は下りだよ」と教えてもらった。

検問所から少しだけ尾根の上を走るのだが、谷底遥か下に少し大きめの集落が見える。
恐らくはあれが国境の町だろう。
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そしてまた出ました、アホな斜度の上り坂。
斜度自体は沢直後の方がきつかったけれども、この道はひび割れと砂利が大きく、タイヤが取られてスリップしそうになる。
ここで初めて足を付いて自転車を押してしまった。
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このアホ斜度を上り切った後、緩やかに上ったり下ったりを繰り返し、その後は恐ろしい程の下り坂となって道を下り始める。
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先ほどまでの上り坂が「アホ」な斜度なら、この下り坂の斜度は「気が狂っている」と表現すればいいだろうか。
ブレーキレバーを握りすぎて手が痺れる程などに、お構いなしにずり落ちていく自転車。
最後の方は足も使ってブレーキを掛ける程だったが、それでもずり落ちていく程だった。

そして遂に眼下の谷底に国境が。
ペルー側の道路は舗装路が通っている!

そりゃ舗装路を走ってきて、国境を跨いだと同時にこの斜度と未舗装路なら、途中で諦めても仕方ないな・・・と、
途中出会ったフランス人カップルに同情を覚える。
彼等の後にも、ペルー入国後に6人もの北上組サイクリストとすれ違ったのだが、その度に「ご愁傷さま・・・」と内心思っていた。

この道はペルーから入国して北上する場合、グアテマラに匹敵するレベルの難易度に跳ね上がると思う。
Zumbaから南下する場合は何だかんだで斜度は緩いし、下りの方が多い。
ペルーから北上は、最初の上りで心が折れると思う。自転車を漕げる様な斜度をしていない。

まぁ、この道を走り終えた私には関係がない話。同情はするけれども・・・。
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坂道を下り切って国境の町には正午12時到着。

エクアドルの出国処理は警察でツーリストカードを記入してすぐに終了。
橋を渡るとすぐにペルーなのだが、なにやら橋の上でセレモニーが。
テントが張られて椅子が設置されて人が腰かけており、そのテントの周りを囲むように人垣ができている。
脇に抜け道を作る訳でもなく、完全に道を塞いでいる。

それでも何人かは「ちょっと通りますよ」と人垣を分け入って通っていたため、私もそれに倣って通り抜ける。
そして無事橋を渡ってペルー側へ。
入国処理をするためにイミグレーションオフィスへ向かうと、そこで審査官にこっぴどく怒られた。

「お前の国では大事なセレモニー中に平気で横切るのか?」、と。

日本なら抜け道を作るだろうし、そもそも道を完全封鎖するようにセレモニー会場を設置しない。
それに、何分掛かるか分からないセレモニーを待てない。

という言い分も私にはあったが、ここは日本ではないのだし、確かにセレモニーを横切った無礼は恥ずべきところであり、「本当にすみません」と平謝りだった。

最後の方は「もういいよ、仕方ないよ」ということで許してくれ、滞在日数120日のスタンプをもらい、無事入国。
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エクアドル滞在はちょうど30日。
入国から出国まで、この30日間毎日がドラマチックな国だった。
「この道が今まで走った中でも最高の道や!」というのを、毎日更新するかのような絶景が日々続いていった。

入国してすぐのパンアメリカンハイウェイ。キロトアループ。エクアドル最高峰チンボラソ一周。そしてCuenca以降の国境越え未舗装路ルート・・・。
忘れられない道がたくさんこの国にはあった。

「さよなら、エクアドル」

若干後ろ髪を引かれる思いで、固いアスファルトの地面を蹴って、ペルーの道を走り始めた。

(走行ルート:Zumba→Peru国境La Balza)

コメント

  1. ペルーですか!!!
    エクアドル記事も楽しませてもらいましたが、ペルー楽しみです(^^)
    店長…口悪いですね(笑)褒め言葉にアホですか(笑)

  2. この道を褒めるのに、「いやーこの道はすごい!素晴らしい!」と嘘の言葉を並べるより、「アホかこの角度!誰やこの道を作ったアホは!・・・でも楽しいぞ!」という、正直にこの時に感じたことを書いてみました。
    > ペルーですか!!!
    >
    > エクアドル記事も楽しませてもらいましたが、ペルー楽しみです(^^)
    > 店長…口悪いですね(笑)褒め言葉にアホですか(笑)

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