「サイクリスト」になれる道~Zumbaまで

8/29 (466days)
8/29
Palandaに到着した夜から雨が降り始め、その雨が翌日以降も降り続いて結局2泊もしてしまった。
宿場町の様な、小さな町であるPalandaでは特にすることもなく、一日ホテルでぼけっとしていた。
2つ目の橋を渡った所から未舗装路が始まり、上り坂が始まった。

この日目指すZumbaの町はPalandaから50キロなので、ここがちょうど折り返し地点になる。
時間はまだ10時過ぎであり、「おいおい余裕でZumba着いちゃうじゃん」と余裕まで出てきた。
商店でヨーグルトを買い、小休止。
当然の様に凸凹の穴があり、小さな石が転がり、沢から流れ出た水が道を横切っていたりするのだが、不快感はない。
むしろ、この状況が走っていて非常に心地よい。
穴に嵌らない様に避け、石を踏んで滑らない様に避け、撥ねた水が掛からない様に足をあげ・・・。
そうした行為全てが、舗装路では感じたことのない「自転車を操っている」感覚を私に与えてくれる。

少し前に、「私のやっていることは、バックパッカーが自転車で移動しているに過ぎない」と日本人のバックパッカーと話している時、自分を評して言った事を思い出した。
これは決してバックパッカーを貶めている訳ではない。
自転車はただの移動手段であり、観光地に着けば普通に観光をするのだから、バックパッカーと変わらない、ということを言いたくて出た言葉だ。
舗装路でゆっくり走っていれば特に苦労も無く目的地に着き、観光を楽しむ。
これは果たして自転車旅行を真に楽しんでいるのだろうか・・・バスや飛行機で移動することと大差ないのではないか・・・そう感じていた。
私はこの日、この旅行中初めて「あ、自転車旅行をしているな」と感じたかもしれない。
決して快適とは言えないこの未舗装路の道を「楽しいな」と思いながら走っている自分。
エクアドルに入国してこの日がちょうど30日目。
有名な観光地は多くないが、どこを走っても刺激的で楽しいエクアドル。
この国は、私に本当の意味での「走る楽しさ」を教えてくれたように思う。
この日この道を走って、自分が「旅行者」から「サイクリスト」になれた気がした。
商店のベンチに腰掛け、昼食に持っていたパンとバナナを食べる。
この付近ではコーヒー栽培をしているのだろうか、豆を天日干しにしている。


商店のお母さん曰く、この集落から川まで下り、再度上ってようやくZumbaの町だという。
乗用車で30分、大型トラックなら1時間とのことで、自転車なら2時間くらいだろうと皮算用を立てて出発する。
お母さんの言う通り、集落を出るとすぐに下り坂が始まる。
ブレーキをフルで掛けても止まらないような急坂で、ブレーキレバーを握りっぱなしの手が痺れる程だ。
谷底には確かに川が流れ、集落がある。
そしてその集落から、対岸の山をウネウネと上る道が続いている。
あれをまた上ることになるのか・・・。
あっという間に谷底の集落に着き、外れにある上り坂の入り口を見た時、「はぁっ!?」という声を出してしまった。
写真では伝わらないのだろうが、斜度がえげつない。
成程、Zumbaまで本日最後の上り坂、徹底的に潰してやろうということか・・・受けて立ってやろうじゃねえか!
と、意気込んで上っていくのだが、えげつない斜度の曲がり角を上り切った後、次の曲がり角に着くと同じくらいの、下手をすれば先ほどよりもキツくなってねぇか!?という斜度が現れる。
その度に「ええ加減にしてぇや!」と叫ぶのを何度繰り返しただろう。
斜度がキツイのに加え、ここら辺から日差しが殺人的に強くなってきた。
汗が滝の様に流れて顔を濡らし、痛くて目が開かなくなる程。
更にこんな酷道なのに大型バス、トラックは行きかって砂埃を巻き上げてくる。
脇を車が通るたびに「こんな道を車が走るなボケェ!」と叫んでいた。
1.5リットルも残っていたジュースが、この区間であっという間に無くなってしまった。
止まらない汗でぐしゃぐしゃになった顔を、道路を横切る小川の水をすくって洗う。
それでもすぐに汗だらけになるんだけれども。
最後は流石に疲れた状態で、15時半にZumbaの町に到着。
ここがエクアドル最後の町。
エクアドル最後の晩餐。
まだ国境までの30キロが残ってはいるが、これでエクアドルも終了。
本当に走っていて楽しい国だった。自転車走行という意味では今まででダントツ一位だろう。
次のペルーも、同じように自転車で走っていて楽しい国であればいいな。
(走行ルート:Palanda→Zumba)