富士山より高みへ・・・アンバトまで

Quilotoa~Ambato
8/10~8/11 (447~448days)

8/10
ホテルの朝食を食べ、もう一度キロトア湖を見てからQuilotoaを出発。
Quilotoaを出るとすぐに下り坂が始まり、標高3700メートルから一気に400メートル落とされる。
下った先には山の中の平原が広がっている。
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平原ではインディヘナの人々の暮らしが営まれ、彼等は様々な生き物と共に生きている。
鞭を振るい巧みに先導し、家畜達もそれに従順に従う。

ニュージーランドを走った時には、犬が家畜を追い込んで先導していた。
南米でもあの狂った様に追い回してくる犬畜生を上手く調教して、奴らに役目を与えればいいのに・・・。
どうせ寝てるか弱いくせに吠えるしか能がないんだし。
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しばらく走ると谷の中にZumbahuaという町が現れる。
囲んでいる山々はどれも地図上では無名なのだが、恐らく富士山よりも標高は高いだろう。

そういえば、キロトアループに入ってから標高は3000メートルをほぼ常に超えているのだが寒くはなく、半袖半ズボンで自転車を漕いでいる。
昔に富士山に登った時、八合目の山小屋に泊まり、夜中にトイレに行くために外に出た時には凍えるような寒さだった。

ここいらでは夜中でもそこまで底冷えするような寒さはないのは、やはり赤道近く、という理由からだろうか。
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Zumbahuaの側に広がる大地には巨大な亀裂が走っている。
その様はアメリカのキャニオンランズ国立公園を思い出させる。
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Zumbahuaを抜けると再度道は上りへと転じる。
標高3000メートル超では樹々が育たないのか、視界を遮るものがなく、自分が行く道が正面の山肌沿いに通っているのがはっきりと見て取れる。
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家畜で飼われているリャマにも社会性があるのだろうか、内一匹が私をじっと見据え、威嚇のためか徐々に距離を縮めてくる。
見た目は可愛らしいがその実結構体は大きいため、蹴られでもしたら大変なことになりそうだ。
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上っている最中に見えた山々。
こういう形の山、大好物です。
異常な開墾能力を持つエクアドル人でも、流石に切り立った山頂を開墾することはできなかったようだ。
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上り切って標高3600メートル。
眼下には下ってまた上らされる、蛇の様にうねった道が見える。

折角獲得した標高を失い、また上りなおすというのは身体的にもそうだが、精神的な戦いとなってくる。
気持ちが切れた瞬間にペダルに掛かる重みというのが何倍にも感じられるため、下手に小休止などしてしまうとそこから進むことが辛くなってしまう。
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再び標高3300メートルまで落とされ、3600メートルまで上ってきたが、今回の上り坂はまだまだ先が長いようだ。

路肩にあった廃屋に入り、お湯を沸かしてインスタントラーメンを作る。
風を避けるために廃屋に入ったのだが、屋根のない隙間だらけの廃屋ではあまり効果がなく、四畳程のスペースに入ってきた風が渦巻いている。

3300、3400メートルではほぼ無風なのにも関わらず、3500メートルを超えてくると途端に風が強くなり、聞こえる音は「ゴオォッ」という風の物だけになる。
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気持ちを切らさないために、昼食後すぐに間を空けずに出発する。
強風を顔面に受けながら、徐々に進んで行く。
標高が3700メートルを超えた。
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標高3700メートルを超えた辺りから、胸のあたりがザワザワし始めた。
この旅行に出る前、日本で一番高い場所・富士山の標高3776メートルを超える場所を走るというのは、私にとって一種の憧れだったのだ。
その瞬間がもう、間近に迫っている。

顔を上げて前方を見ると、道が右の方に曲がり、その先にはもう上り坂がないように見える。どうやらその曲がり角が峠の頂上のようだ。
前からくる風の圧に負けない様にペダルを漕ぐ力を強める。

曲がり角に辿り着くと、そこには枯草の様な小麦色もしくは茶色の草ばかり生えた平原が広がっていた。
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平原では遮る物が何もなく、風が文字通り暴風となって吹き荒れている。
時には立ち止まって自転車を両手でがっしりと持っていないと吹っ飛ばされそうになるほど、強烈な風が吹いている。
標高を見ると、3800メートルを超えている。
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この3820メートルは、旅行はもちろん、私の人生の中での最高到達地点。
私はこの旅行に出るまで、日本から出たことがなかった。
そんな私にとって、日本国内最高峰である富士山の3776メートルというのは絶対的な数字であった。

たった数十メートル超えたに過ぎないが、この日私が見たこの平原の風景と言うのは、間違いなく私にとっては未知の世界であり、この平原を見た瞬間、自分の中の世界が広がった感覚を覚えた。

これから南米を走る中で、4000、5000メートルの峠を何度も越える機会があるだろう。
それに比べたらこの日の3800メートルなどというのは、標高的には大したことはないかもしれない。
それでも、「自分が今まで知っていた世界よりも高い所に来た」というこの日は、私の中では特別なものとなった。
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3800メートルの世界というのは一瞬で終わり、一気に下りに転じる。
その下りの間、興奮からなのか、本当に空気が薄いのかは分からないが、「はぁー、はぁー」と私の呼吸はほとんど過呼吸という程に荒い物となっていた。
恐らく、「やった!やった!」という興奮からだとは思うが。それ程嬉しい出来事だったのだ。
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標高3800メートルからの長い下り坂を下り終えてキロトアループを抜けた後、坂の途中から眼下に見えていたLatacungaの街に到着し、ホテルに投宿した。
街に到着してからも、未知の世界を経験したという嬉しさの余韻がまだ残っていた。
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8/11
この記事を書いている当日なのだが、Latacungaを出てAmbatoまでの道というのは、ほとんど印象に残っていない。
キロトアループを抜けてメイン道路に戻ってくると、まずは交通量と排ガスの多さに面食らい、景色の変化の無さと面白くなさに拍子抜けした。

Ambatoには13時頃、無事に到着。
人通りが多く建物も高い物が多く、中都市のようだ。
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キロトアループで見た景色・経験というのが、私の脳裏にべったりと張り付いて離れない。
インディヘナの人々、リャマや羊などの家畜達、峠の頂上で見た不毛の平原・・・。
忘れられない思い出深い走行となった。

ここAmbatoで2日間休養を取った後、また幹線道路を離れて今度はエクアドル最高峰・Volcán Chimborazo(チンポラソ・標高6268メートル)を一周するルートを取る予定だ。


(走行ルート:Quilotoa→Latacunga→Ambato)

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