どローカル道・キロトアループを走ろう

8/7~8/8 (444~445days)
8/7
思わぬトラブルで4泊もしてしまった首都・Quitoを出発する。
大都市と言うのは自転車旅行者にとって、入るも地獄、出るも地獄なのであり、特に用事が無ければ立ち寄りたくない場所だ。
というのも、交通量は多いわ道順は複雑だわで、入る時も出る時も大抵車にもみくちゃにされてぐったりと疲れてしまうのである。
そのため、出発前夜にはしっかりと脱出経路の道順をGoogle Mapにて把握し、完璧に予習していた。
が、出発してものの10分でしっかりと迷子になる私。
市街地ど真ん中を通り、とんでもない傾斜の坂道を上り、いつの間にかQuito市街を一望できる場所まできてしまった。
エクアドルの人は皆親切で、嫌な顔をせずに丁寧に教えてくれ、私が間違った方向に進もうとすると追いかけてきて「違う違う!あっちだよ!」と正してくれた。
そのお陰で、大分遠回りはしたがようやく郊外にでるための大通りに到達した。
両側2車線の立派な幹線道路で交通量と排ガスの量は凄いのだが、道路を挟む景色はいずれも牧草、農地の田舎風景。
先ほどまで滞在していた大都会Quitoの乱雑さとは大違いで、ゆっくりとした雰囲気がある。
昼食をMochachiという街で取った後は、角度は大したことはないがダラーっと長い上り坂が続き、じわじわと標高を上げていく。
標高3350メートルまで上った後は、一気に下り落ちる。
下り切った所、南方面に進む国道と、西方面に進むローカル道路の分岐点が現れる。
西側方面に進むルートは通称Quilotoa Loop(キロトアループ)と呼ばれており、標高3800メートルに位置するLaguna de Quilotoa(キロトア湖)沿いを走ることができる。
キロトア湖を訪れた後、湖を迂回して再び国道へと復帰して南下するルートをとることにした。
分岐点を曲がると国道の立派な道路とは打って変わり、片側一車線の凸凹の道に変わった。
しばらく走るとPastocalleという集落に着いたのだが、ホテル等の宿泊施設は一切ない。
教会にダメ元でテントを張れないかお願いしてみたが、やはり断られてしまった。
Pastocalleの街の中は石畳、いや、石畳ならまだマシで、深砂でタイヤが取られてしまうような道まで出てきた。
しばらく進むとアスファルトに戻ったが、宿泊施設は一向に見当たらない。
Hosteriaというホテルよりも一段階上の宿泊施設を発見したが一泊35ドルで即撤退。
そこからしばらく進むと公園があり、その裏に茂みがあり。
チェックしてみると丁度道路からは死角になっており、テントを張るのに打ってつけの平な芝生エリア。
この日はここで野宿をすることにした。
久しぶりにキャンプをしたが、やはりホテルに泊まるよりもめちゃくちゃに楽しい。
日が明るい内に米を炊き、玉ねぎとトマトをコンソメで味付けしてオムレツにして丼ぶりにして食べる。
美味い!これがやはり自転車旅行の醍醐味だよな、と思いながら、日が落ちた19時には眠りに就いた。
8/8
テントを打つ雨の音で目が覚める。
雨が降るとテント内が浸水してしまうため、すぐに荷物をテント内中央にまとめた後、テント前室でお湯を沸かしてインスタントラーメンを作る。
幸い朝食を終えた時には小雨になっていたため、レインウェアを着て出発する。
朝靄なのか雨のせいなのか、視界が悪い。
それにしても、田舎道に入ると犬の凶暴性が一気に増した。
それも4、5匹で徒党を組んで追いかけてくるため、非常に厄介だ。
私も背中に差しているいる名刀正宗(木の棒)で応戦するのだが、多くのサイクリストに「エクアドルから犬はヤバくなる」と忠告を受けた理由がよく分かった。
出発して7キロ地点。
小さな集落があり、地図で見る限りこの先レストランがあるようなまともな町はないと判断し、商店でパンとジュースを購入した。
パンが8個と1.75リットルのジュースで2ドル。何という安さ・・・。
ここでパンをサイドバックに入れようとしたときに、異変に気付いた。
朝、サイドバックに入れたはずの自転車ロックのU字部分が、ない。
普段はワイヤーに絡めて背中側にむき出しで保管しているのだが、この日は雨に濡れた自転車用カバーを背中側で干すために、サイドバックに入れておいたのだった。
ワイヤーとロック部分はあるのだが、U字部分がない。
「最悪や・・・」どうやら野宿した場所に忘れてきたようだ。
自転車のパッキングというのはルーチン化されるものであり、私のパッキングは出発1か月後には今の形になっていた。
それ以降、自転車ロックは常に背中側に置いていたため、今回サイドバックに入れるのは初めてのことだった。
それが、今回の失態を招いてしまったわけだ。
野宿場所から距離は7キロ、標高は300メートル上ってきたわけで、時間にして1時間。
少し迷ったが、カナダで購入した結構な値段のロックなので、渋々戻ることにした。
戻りは下り坂のため、ものの20分程で野宿先に戻ってきた。
が、いくら探してもU字部分がない。間違いなくここにしかないはずなのに、ない。
もう一度鞄の中をひっくり返して確認し、テントもわざわざ広げて中を見たが、やはりない。
「んな、アホな・・・」
野良犬にでも持って行かれたのだろうか・・・。
意気消沈して、来た道を戻り、また同じ犬畜生共に追いかけられ・・・。
全く自分が情けなくなってしまう。
(※2枚上の写真と同じ場所にて撮影。朝靄が如何に掛かっていたか、お分かり頂けるでしょうか)
先ほどパンを購入した商店を過ぎると、さらに田舎の趣が増し始めた。
意気消沈する私の心とは裏腹に、これこそ私が走りたかった道だ!という風景がそこに広がっている。
私がパンを買った商店からこの日夕方到着したSigchosまで、集落はおろか一切の商店すら存在していないのだが、民家だけはポツポツと点在しており、家族で畑を耕し、牛を育てている。
恐らく母親が背負いながら働いているのだろう、畑には赤ん坊の泣き声が響き、子ども達は牛の水やりに奔走している。
標高は3300メートルまで達し、そこからは一気に下りへと転じる。
回りも牧草地とは一転、深い谷に囲まれ、切り立った崖沿いに曲がりくねった道を下っていく。
眼下の崖下には、これから私が下っていく道が山の間を縫って通っているのが見える。
この道が本当に素晴らしかった。
山、山、山の連続。
なのだが、少し下ればまた違った風景を見ることができるため、ゆっくり眺めるために何度も立ち止まる。
そのため一向前に進まない。
しば
らく下っていくと、対岸の山肌に道が見える。
どうやら今下っている道を下り切った後、向こうの対岸の道を上っていくようだ。
標高2300メートルまで落ちて川を渡った後、案の定道は180度くるりと向きを変えて上り始めた。
この時点でSigchosの町まで残り10キロなのだが、この10キロがかなりきつかった。
道は九十九折で傾斜もかなりきつく、舗装状態もあまりよくはない。
再び高い所まで、標高2700メートルまで上ってきた。
今度は自分が下ってきた対岸の山を見ながら「あそこの道を下ったんだな」と、ふうふう息を切らせながら眺める。
Sigchosの街には夕方到着。
小さな街で、全く観光地ではなく静かで過ごしやすい。
翌日にはキロトア湖に到着予定である。
(走行ルート:Quito~Pastocalle→Sigchos)