コロンビアの本気~Pastoまで 後編

El Remolino~Pasto
7/25~7/26 (431~432days)

7/25
昨日の殺人的な暑さを鑑みて、少し早めに出発する。
平常時は大体8時前スタートなのだが、この日は7時半スタート。
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しかしたった30分程では効果は全く見られず、朝から照り付ける太陽と少しのダウンもない上り坂により、すぐにシャツは全体がびしょ濡れに。

しかしそんな暑さも汗も、この景色を見ながら走れば全く気にならない。
この景色を堪能しながら、ゆっくりゆっくり上ってく。
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途中、15キロ程走った所で集落があり、そこにあるレストランで早めの補給としてスープを注文する。
上り坂の怖い点として、上半身も含めて全身の力を使っているため体力の消耗が激しい。
そして気付いた時にはエネルギーを全部使い果たし、ハンガーノック(空腹によるいわばガス欠状態)に陥ってしまう所だ。
アンデス山脈のように長く続く坂道で、かつ集落間が数10キロ程離れている時には、無理をせずに小まめに休憩する方がいい。

クッキーやパンなどの食料を携行するのも一つの手なのだが、私の場合ここまで長い坂道だと少しでも軽い重量にしたいため、最近ではほとんどそうした食料を持つことはなくなった。
その代わりに、コカ・コーラのような糖分多めでカロリーが高い飲料を水の代わりに持ち運ぶことが多い。

今の現状を思うと、カナダ・アメリカを走っている時なぞ、よく毎日1㎏近いクッキーをサイドバックパンパンにして運んでいたな、と思う所存である。
上記二か国は街の間が100キロ離れていることがザラにあったため、致し方ない所もあるのだが・・・。

それにしても凄い場所に集落を造ったものだと、休憩後に振り返ってみて、その立地場所の状況を見て改めて思う。
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休憩後もガンガンと標高を上げていく。
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山肌に沿ってまるで蛇が這うようにグネグネと道が作られているため、前方にはこれから進んで行く道がうっすらと見えている形になる。
標高はまだまだ上がっていくため、その見えている道も基本的に常に右肩上がりなのだが、「マジですか、まだ上るんですか」なんて不満を漏らしつつも、何故かニヤニヤが収まらない。
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むしろ、この景色を見せられればいくらでも標高を上げてもらっても一向に構わんですよ、という気概である。
間違いなく、この日通ったこの道は、私がこれまでに走ってきた中でも一二を争う程の美しさであり、「世界で一番美しい一般道」部門で言えば文句なしで暫定一位だ。
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そしてこんな険しい所にも人の生活というのは営まれているわけで、山肌の傾斜には畑がべったりと張り付いている。
なんだか薄布が縫い付けられたか紙が糊で貼り付けれれたかのような質感で、強風でも吹けばペロッと剥がれて飛んでいっちまうんじゃないか?という風に見える。
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少し走っていくと、今まで見上げる形で見てきたこれから進むべき山肌を這う道が、眼下に現れた。
これは今いる位置が頂上付近であることを意味しており、ここから一気にダウンヒルが始まるはずである。
そして私の地図が示すには、一気に谷底まで急降下した後に、そこから
また山越えが始まるとある。

これは後半戦の山越えに備えなければならん、ということで、下り坂の途中に丁度良くあったホテル兼レストランで昼食休憩を取る。
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昼食の後はもう正に急転直下、かなりの角度で標高を下げていくのだが、正面と横からくる風が猛烈で、制御が利かなくなる程に自転車を揺さぶられるためかなりの恐怖を感じる。
下り坂なのにブレーキを小まめに掛け、ほとんど平地走行と変わらない速度でそろそろと降りていく。
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左側の崖はかなり脆いらしく、時折パラパラと音を立てて砂利が落ちてくる。
大き目の岩もいくつかあり、私が走っている右側の道路にごろっと転がっている。
崩れて落ちてきたのだろうが、大きさから見て直撃を喰らえば無事では済まないだろう。
強風にも落石にも神経を集中させて注意しなければならない。
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この下り坂の途中で北上組のイギリス人サイクリストに遭遇。
アルゼンチンのウシュアイアからアラスカへ向かうらしい。
彼を含め、Popayán以降で既に8人もの自転車旅行者に出会っている。
このルートは世界中のサイクリストの中でも美しいことで有名なのだろうか。
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彼と別れた後も、坂道をガンガンと下っていく。
少し走ると峡谷の間に川が流れ、橋が架かっている風景に出くわす。
この橋がちょうど谷底で、橋を渡った先にはまた山肌に沿って右肩上がりの道が通っているのが見える。

橋を渡っている時に標高を確認すると850メートル。
この日のスタート地点が標高660メートルで、昼食を取ったレストラン付近が標高1480メートルであったことを考えると、とんでもない標高差である。
この日の目標地点であるChachaguiの町は標高1800メートル超のため、ここからまた1000メートル近く上りなおさなければならない。
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橋を渡り切って坂道を登っている時、対岸にある先ほど自分が下ってきた道を見てみると山肌が荒く崩れており、土砂崩れ頻発地帯であることが理解できた。
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標高が1000メートルを切るとやはり気温も高くなるため、上りなおしている最中は暑さに苦しめられた。
上り坂は楽しく、この時もやはり雄大な景色に息を飲む思いだったのだが、昼過ぎになると少し焦りも生まれる。
というのも、この日目指しているChachaguiの町までは、地図上では町が存在していない。
昼食を取った時点で残り32キロ程、坂道走行を考慮すると単純計算で4時間は掛かる。
かといってこの上り坂ではペースは上げることができないため、気持ちだけが焦ってくるジレンマ。

と言いつつ、写真を撮るために何度も何度も足を止める。
この風景の中で足を止めるな、なんて無理な話です。
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標高1700メートルまで登った所に料金所があり、その先に地図に載っていない町があった。
この時点で16時頃、Chachaguiまで残り8キロだったのだが、行く手に聳える山には怪しい色の雲が掛かっているし、高々8キロをこの日無理して走る必要はないと判断し、この町のホテルに投宿した。

なお、こんな小さな集落にホテルが4軒程も軒を並べているのだが、私を含め同時刻に到着したフランス人カップル自転車旅行者も2軒程断られ、投宿したホテルでも渋々了承、といった感じだった。
私のスペイン語では理解ができなかったのだが、その後英語でフランス人と話したところ「どうやら我々は不審者と思われているらしい」とのことだった。
ホテルが客を選ぶなんてことがあるのか?と少々不思議な体験だった。
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一夜明けても、前方向かうべき道には怪しい雲が立ち込めている。
この日目指すPastoは標高2600メートル付近に位置する大都市であり、その回りにある山に雲が引っかかりやすいのかもしれない。
少し天候に不安を感じつつも、この日もゆっくりと上り坂を走行していく。
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10時過ぎ頃、レストランがあったため早めの休憩に入ってみる。
スープが安いのはこれまでの経験上で分かっていたため、「スープある?」と聞いてみると「スープはないけどArepas con quesoならあるわよ」という聞きなれない料理名が出てきたため、頼んでみた。

形状はどら焼きで、中にチーズを挟んだ料理だ。
甘くはなく、うっすらとチーズに塩味が利いている。
このレストランでは注文してから一つずつ釜土を使って焼き上げているようで、出来立てで温かく美味しい。
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休憩を終えてレストランを出ると、少し霧雨が降っている。
霧雨程度なら大丈夫、と思っていたのだが、次第に雨粒が大きくなり、路面を一面濡らす程になってしまった。
料金所の近くの建物に逃げ込んで雨が止むのを待ったのだが、標高が2000メートルを超えている中での雨は体を急激に冷やしていく。
音楽プレイヤーを引っ張り出して、録音していたラジオを聞いて雨が止むのをただただ待つ。
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40分近く待ったところで雨脚が弱まり、雲の切れ間から青空も見えるようになったため出発する。
結局この後も雨は降っては止んでを繰り返すことになり、合羽を着て走る事にはなったのだが。

Pastoが近づいてくると山肌に張り付いている畑の規模も大きくなり、その様はまるでパッチワークのようだ。
ピークは標高2700メートルまで上り、Pastoの街を見下ろしながら急降下していく。
朝の時点ではPastoは素通りしてもっと先まで行く予定だったのだが、今日は雨が断続的に降るだろうし、足も冷えてしまったためPastoに一泊することにした。
この時も横風が強く、ハンドルを強く握りしめてバランスを何とか保ちながら無事に到着した。
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無事に街に入ったはいいものの、どこが中心部か分からないため近くにいたタクシーの客引きの親父さんに「中心部はどこ?」と聞いたついでに「安いホテル知ってる?」と聞くと、親父さんは付いてこいと誘導してくれた。

連れて行ってくれた先は中心部にある外装も大層立派なホテルで、「とても泊まれたもんじゃないよ・・・」と見た瞬間に思った。
案の定一泊45,000ペソ(約1,700円)でとても予算から出せる値段ではないため断ろうとした所、「35,000ペソ(約1,300円)に落としてあげるよ」とのこと。

それでも普段泊まるホテルより大分高いのだが、10,000ペソも割り引いてくれたことと、親父さんの厚意に申し訳ない気持ちと、雨が再び降り始めて他を当たるのが面倒くさいことが相まってここに泊まることにした。
コロンビア通貨も幸い多めに余っていることだし、たまにはパーッと贅沢にいこうや!という気持ちもあった。

親父さんはその後自転車を運ぶのも手伝ってくれ、満面の笑みで仕事に戻っていった。
コロンビア人、ナイスガイ過ぎるぜ。

こんないい部屋に泊まるなんて、普段あり得ないんですけどね。
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大分早い時間に着いたため、シャワーを浴びた後に市街地を少し歩いてみた。
標高が高いこともあり、Pastoの街はかなり寒く、人々もほとんどの人がダウンを羽織っている。
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大都市ではあるのだが割と落ち着いた雰囲気で、これが外務省の海外渡航情報でレベル3の勧告を受けている街とは思えない。
とはいえ歩いている人の数は多く、体感での人口密度はMexico Cityに次ぐ多さであったため、余計な荷物は持たずに空身で歩くようにはしていた。
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教会はずいぶん立派で、内装もこれまでの他のコロンビアの都市で見られた質素な内装の教会とは違い、かなり凝ったものとなっている。
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コロンビア出国までこの日も含めて残り5日の予定。
大分コロンビア通貨が余っているのであり、夜は中華料理でも食って豪華に行きますか!
と意気込んでレストランに行ったのだが、値段を見て閉口してしまった。
私の大好物のChow Mien(焼きそば)が一番安くて17,500ペソ(約650円)もする。

「ふざけるなっ・・・下手をすれば安ホテルに一泊できる値段じゃねぇかよっ・・・!ただでさえ今日のホテルには大金をつぎ込んでんだっ・・・!」
「俺は30,000ペソを残し、エクアドル入国と共に両替をするっ・・・誰が使うかっ・・・!」

?「へただなぁ・・・」

私「はぁ・・・?」
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心の声「欲望の解放のさせ方がへた・・・・」

「オキノくんが本当に欲しいのは・・・こっち(特製焼きそば)・・・・!」

「出来立てのホッカホカをさ・・・・冷えたジュースでやりたい・・・・!だろ・・・・?」

「食えなかった焼きそばがチラついてさ・・・・全然スッキリしない・・・・」

「贅沢ってやつはさ・・・・小出しはダメなんだ・・・・違うかい?」

・・・・・・
・・・・
・・

気が付けば・・・・

豪遊っ・・・・!

ホテルに続けて豪遊っ・・・・!

溶ける30,000ペソっ・・・・!

やってしまった・・・・っ!
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(走行ルート:El Remolino→El Tablon→Pasto)

コメント

  1. (笑)
    自分にご褒美と言うことで(^^)
    こっちも夏真っ盛りで暑いですよ。
    標高高いとやはり寒いんですね。ダウンとは。
    走る気持ちも戻って景色も綺麗で親切な人に会って。
    南米って本当に景色良いですねぇ❗

  2. 初めまして。いつも楽しく読ませてもらってます。自転車の旅は体力いりそうですが、気持ち良さそうですね。
    南米の教会の写真をみて思わずコメントさせていただきました。世界各地の教会の中で、南米の教会が特に好きなんです。
    南米、気をつけて旅を続けて下さい。

  3. 低地だと気を付けないと熱中症になるんじゃないかという程に暑いですが、流石に標高3000メートル付近だとダウンが必須です。
    コーヒーミルは持ってこなかったのですが、これに関しては持ってこなかったことを後悔している装備第1位です・・・。朝に自分で轢いたコーヒーをのんびり飲みたい・・・
    チョリソーは辛くはないです!若干しょっぱいかな?

  4. ご愛読頂きありがとうございます。
    キリスト教徒ではないのですが私も教会が好きで、よく椅子に座って瞑想をしています。
    次回の記事ではちょうど教会にスポットを当てたものを書く予定です!

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