アンデス山脈を越えろ!~メデジン到着

El Quince~Medellin
7/7~7/9 (413~415days)

7/7
雨から逃げるように投宿したホテルを離れ、いよいよアンデス山脈へと突入する朝。
ホテルの標高は腕時計の高度計が示す200メートル、これから突入するアンデス山脈は紙地図の等高線が示す3000メートル付近が最大標高のようだ。

頂上までは恐らく下りは一切ない、ひたすら上る厳しい走行となることが予想される。
が、これから始まる苦労よりも遥かに「アンデス山脈を走ることができる!」というワクワク感の方が強かった。
やはり南米走行と言えばアンデス山脈越えであり、旅行に出る前からの憧れでもあった。

天候は昨夜の雨が嘘の様に晴れ渡っている。最高のアンデス越え初日である。
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川沿いを南下していると、辺りが山に囲まれ始めた。
上り坂にはなっていないのだが、いよいよアンデス山脈が顔を覗かせ始めたようだ。
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出発してから20キロ程走ったろうか、Puerto Valdiviaという小さな町に到着した。
アンデス山中にはValdiviaという同じ名前の町が存在しているのだが、今到着した方のValdiviaの頭に付いているPuertoは日本語で「入り口」を表す。
つまり、この町がまさにアンデス山脈の入り口ということだ。

Puerto Valdiviaの集落の出口に大きな川があり、そこに掛かる橋を渡り切るとすぐに上りが始まった。
さぁ、アンデス山脈走行の始まりだ。
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傾斜は思っていた程酷くない、というよりか、かなり緩い傾斜で進んで行く。
「この分ならまぁ余裕だろう」と思い、どんどんと進んでく。200、300、400メートル・・・。
順調に標高を上げていくのだが、とにかく暑い。標高が上がっているのにも関わらず、一向に涼しくなる気配がない。まぁ、気温が下がるのは標高1000メートルくらいからだろうが・・・。
とにかく汗が滝の様に噴き出す。
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標高が上がるにつれて、段々とアンデス山脈がその美しさを覗かせ始める。
この美しさを見れば、たとえどんなに坂が続こうが腰が痛かろうが、全く気にならない。
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一番軽いギアで高速回転させながら上っているため、速度自体は時速7、8キロ程しか出すことができない。
それでもやはりこの風景の中で走るのは最高の気分だ。
それも更に、標高を上げる毎に美しさは増していくとなるとペダルを止める理由がどこにもない。
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走ること36キロ、11時半頃にValdiviaの町に到着。
この時点で標高は1,000メートル。
アンデスの山の斜面に張り付いた小さな町で、よくまぁこんなところに町を作ったもんだと感心してしまう。
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一軒のレストランに入り昼食を取る。
テレビでは延々とポケモンのアニメを流しており、昼食を食べながらついつい3話分(1話=30分)も見入ってしまった。
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昼食休憩を終えてレストランを出てみると、進行方向の山に僅かながら嫌な雲が引っかかっているのが見えた。
もしかしたら雨が降るかも・・・という嫌な予感はあったものの、この日の走行を終了するには時間が早すぎるし、もう少し進みたい気持ちがあったため、先へと進むこととした。

Valdiviaから次の大きな町のYarmalまでは50キロ程離れており、この日の内に到着することは不可能だ。
そのため、レストランの亭主に「Valdivia以降にホテルはあるか?」と尋ねてみた所、「車で30分走らせたところにある」という回答を得た。
今までの経験上、車で掛かる時間を4倍すると自転車での必要時間になる(車=時速60キロ、自転車=時速15キロ)と思っているので、大体2時間程で着くだろうとの皮算用で出発した。
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しかし嫌な予感が的中してしまい、上るにつれて雲との距離が近くなり、ついには雲の中に入ってしまった。
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初めこそ薄い靄だったものが、徐々にその濃さが増していき、終いには3メートル先すら見えなくなってしまった。
この道は交通量が多く、ひっきりなしに大型トラックが前から後ろから上り下りしてくる。
いくらこちらが反射ベストを着てバックライトを点灯させていても、ここまで視界が悪いとほとんど意味はないだろう。

まさかこういう形でアンデスの洗礼を受けるとは思ってもいなかった。
視界の悪さから退くこともできず、路肩の狭さから止まることもできず、できることと言えば「どうか轢かないでください」と祈りながら進むことしかできない。
頼りになるのは、足元にうっすらと見えている白線だけだ。
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Valdiviaから15キロ程走っただろうか、標高が2,000メートルを超えた時、急に靄が晴れた。
余りにもあっけなく晴れたためあっけにとられたのだが、とにかくその瞬間は「命が助かった」とホッとした。
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視界が開ければこっちのものである。
先ほどと打って変わってすいすいと進むのだが、一向にホテルが見つからない。
道行く人に尋ねると全員「前方にあるよ」と答えてくれるため、あることには違いないのだが「どれくらい?」と聞くと「15分くらい」だったり「45分くらい」だったりして、距離感が全く分からない。

夕方も17時になり、全く見つからないことに焦りを覚え始めた頃、広い路肩にトラックが止まり、その側にレストランがある。
もしや!と思い、「ホテルはあるか?」と聞いてみるとレストランの横に簡易ホテルが!
霧に包まれた時には「Valdiviaで泊まっておけばよかった・・・」と後悔したのだが、終わりよければ全てよし。
ちなみにこの日の終わりには、レストランの飼い犬に足を噛まれたのだが。
(※幸いサンダルのつま先カバー部分だったため無傷でした)
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レストランで水を買い、早い時間に出発する。
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やはり標高も2,000メートルを越えてくると、動かずにいればかなり冷える。
自転車を漕げばものの5分でそんな寒さなど吹き飛んでしまうのだが。

前方には「朝からあれを上るんですか・・・」というこちらの悲哀などお構いなしに、容赦のない角度の坂道が「どうぞ早くお越しくださいませ」と言わんばかりに、山と山の間を縫ってするすると上の方まで続いているのが見える。
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下り坂など皆無のこの状況で、心の支えになるのは回りの雄大な風景だ。
むしろ全く辛いとも思わず、こんなにも坂道を上るのが楽しいことなど未だかつてなかった。
山、滝、牧草地に群れる動物・・・全てが美しい。

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2時間程掛けてホテルから20キロ先、標高2300メートルのYarmalという町に到着。
まるで縫いつけられたか接着剤で付けられたかのように、山の斜面にびっしりと町が張り付いている。
中心部には立派な大聖堂があり、結構な人口が住んでいるのが伺える。
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ここからもまだまだ上りが続くため、小まめにエネルギー補給をしようと小さなカフェに入ってみた。
親父さんが一人でやっているようで、厨房は人一人入ればもう一杯だし、席も1つしかないくらい小さなカフェだ。
コーヒーを一つ頼んだのだが、カウンターの上にちょこんと置かれている黄色い餃子のようなものが気になった。

親父さんに「これなに?」と聞くと、「エンパナーダだ。」という。
名前は分かったが、どんな料理なのか分からなければ何も進展していない。
とりあえず2つくれ!と親父さんに言い、この黄色い餃子にかぶり付いてみた。

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食べてびっくり、まんま日本のコロッケではないか!
中身は潰したジャガイモに肉を混ぜており、それを衣が包んでいる。
味もそっくりで、非常に食べやすい。

あっという間にエンパナーダ2つを平らげ、コーヒーも流石に世界一の生産量を誇るコロンビア、雑味が無くておいしい。
コーヒーとエンパナーダ2個で合計1500ペソ(1ペソ=27円。約50数円)。
安い。安すぎる。コロンビアがますます好きになってきた。

休憩もそこそこに、カフェを後にする。
ここYarmalで終わりではなく、上りはまだまだ続く。山は天気も変わりやすいため、午前中にできるだけ距離を稼がなければならない。
Yarmalを出る際、道はわずかながら下る。
これが町を出る際の一瞬の下り坂であることは分かっているのだが、前から感じる涼しい風がたまらなく気持ちいい。
しかしその気持ちよさも本当に一瞬で、再び上り坂が始まる。
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1時間程走っても、Yarmalから8キロくらいしか進んでいないが、焦らずにゆっくりゆっくり上るしかない。
ふと振り返るとYarmalの街並みがよく見える。山の斜面に逆三角形に張り付いており、改めて凄いところに町を作った物だと思う。

その後も上りは続き、牛達が訝し気にこちらを見守る中で上っていく。
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12時頃、スタートから32キロ走った所に小さな商店が集まる集落があったため、昼休憩のために入る。
Cerdo(豚肉)を頬張りながら「まだ上るの?」とレストランの女将さんに聞いてみると、「ここからもう少し上がって、そこからは平らな道になるよ」とのこと。
どうやらもう少しでこの上りも終わりになるようだ。
昼食を食べ終え、ラストスパートだ!と気合を入れなおして出発する。
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標高はYarmalの2300メートルからも緩やかに上がっている。
2400、2500メートルと、時速8キロのスピードでゆっくりだが確実にピークへと向けて走ってきた。
そして2500メートルも後半に差し掛かってきた所で、回りの風景に少し変化が出てきた。
両脇に見える風景が谷を携えた山ではなく、平原が広がり、上り坂ではなくほとんど平地の様な道に変わった。
これは山の頂上付近に近づいてきている証拠だ。

山登りでいう尾根歩きに近い感じで、Puerto Valdiviaから続いてきたアンデス山脈の一番高い所を走る。
山登りでもそうなのだろうが、この平地走行は上り切ったもののみが味わえる一種のご褒美だろう。
個人的には、上っている時の凹凸のある深い山脈の風景の方が好きではあるのだが・・・。
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ここから僅かに上り、高速道路の料金所を越えた所、時計台を兼ねた教会がある、名前の標識すらない小さな集落に到着。
ここが正に頂上のようで、標高は約2600メートル。

アンデス山脈は南米大陸の北からほぼ南端までを貫く巨大山脈であり、南米縦断においてこれから長い付き合いになる存在である。
エクアドルやペルーにおいては、その標高は4000、時に5000メートルまで登ることもあるらしく、私が今走った区間はほんの序章に過ぎない。
それでも、まず一つ目のアンデス山脈を上り切ったことに「ホッとした」というのと「案外大したことがなかった」と自分の体力に多少自信を持てたのが、正直な感想だろうか。
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集落はすぐに途切れ、再び尾根歩きならぬ尾根走りの平原地帯を楽しむ。
上り坂のようにシャカリキに漕がなくても、ペダルを漕がずともある程度惰性で進んでくれるというのが久しぶりの感覚で少し嬉しい。
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しばらくすると下り坂へと道が変化した。このアンデス山脈初の下りであり、どうやら頂上のピーク地点走行はこれで終わり、どんどんと標高は下げていくようだ。

少し下った所、Santa Rosaという町に近づいた。
この日は初めからこの頂上付近にあるSanta Rosaで泊まり、翌日に改めてMedellinまでのダウンヒルを楽しみたいと考えていたため、メイン道路から外れて町へと入った。

町の入り口に熊のオブジェクトがあり、「南米に熊なんていないだろうに何でだ?」と思っていたのだが、この記事作成段階で写真を見て思い出し、調べてみた所「メガネグマ」という品種が南米大陸で生息しているらしい。
体長120~200センチになるらしく、草食性の強い雑食で、どうやら人を襲うことはないらしいのだが、近年は人による乱獲で絶滅危惧種としてレッドリスト入りしているようだ。
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Santa Rosaは山岳の中にある町としては比較的大きいようで、中心にある広場は多くの人で賑わい、立派な大聖堂が鎮座している。
その大聖堂のすぐ脇のホテルに投宿した。
部屋は自転車が入れれない極小サイズだったが、標高が高く夜は冷え込むため、狭い方が冷え冷えとせずに快適だった。
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ホテルのサービスの朝食を食べ、大聖堂を拝んでから出発。
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前日のGoogle Map調べではMedellinまで全て下りだと思っていたが、そんなことはなく意外とアップダウンが続く。
「話が違うやんけ・・・」と心の中で不満を漏らしながら走る。
風景も林道に近いような感じで、余り美しい風景は見られない。
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途中のレストランでエンパナーダ休憩を入れて進むと、林が開けて再びアンデス山脈の美しい風景が見えてきた。
ここから本格的に下るようで、私としては「このダウンヒルを待ってました!」と心躍るような気持ちで、ペダルを漕ぐことを止め、下り坂に全て身を任せて風を切って下っていく。
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しばらく下ったところ、左前方に展望台らしきちょっとした広場があり、ロードバイカー達が足を休めている。
私もついでに寄ってみたのだが、ここからの風景が素晴らしく、山脈に囲まれたBarbosaという街を見下ろす形で展望が開けている。
これこそが2日間を掛けてアンデス山脈を上り切った真のご褒美であり、私のテンションも最高潮にまで達した瞬間であった。
これがあるから自転車旅行は辞められない。
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ここからは鬼の様な下り坂。
ブレーキがほとんど役を成さないような激坂で、速度の遅いトラックをすり抜けるように下っていくため、景色を楽しむ余裕はほとんどない。
「事故るなよ・・・」と祈るような気持で下っていく。
この2日間で溜め込んだはずの標高が、高度計の表示上で嘘のような速度で減っていく。
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下り坂が落ち着いたころ、気付けば道は両側3車線の立派な幹線道路へとなっていた。
大都会Medellinに片足を突っ込んだということだろう。
日曜日ということもあり、広々とした道路では多くのロードバイカー達が走行しており、休日を楽しんでいるようだ。
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「Mazarrado」という聞きなれない単語の看板を掲げた露店が多く出てきたため、気になって自転車を止めて寄っていくことにした。

右がMazarradoで、左がPanela y Pata de Res。
Mazarradoは牛乳にトウモロコシを混ぜた飲み物で、お好みで黒糖を砕いて入れる。
牛乳自体の味はかなり薄味のようで、黒糖を入れることで甘味が効いて美味しくなる。

Panela y Pata de Resは牛乳と黒糖を混ぜ込んで発酵させたお菓子のようだ。
パン生地のようになったもの伸ばして伸ばしてを繰り返す。
餅の様に伸び、結構歯ごたえがある。味は黒糖を使っていることからかなり甘く、キャラメルのよう。

どちらも今まで見たことがない物で、コロンビアの高地地帯での名物なのだろう。

Panela y Pata de Resはコロンビア人が奢ってくれたもので、コロンビア人の優しさには頭が下がるばかりだ。
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しばらく走っていると一つのカーブに差し掛かり、Medellinの郊外がちらっと見えたのだが、わわっと驚いてしまった。
山の斜面にびっしりと隙間なく小さな建物が張り付いている。
Medellinは山に囲まれた盆地の中にある大都市なのだが、この様相には少し面食らってしまった。
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そして14時頃、下調べをしておいたホステルに到着。
チェックインをしようと中に自転車を押して進むと、見たことのある坊主頭が。
そう、私より1日早くCartagenaを発っていた濱さんではないか。

ルートが同じだったため、どこかで会うだろうとは思っていたのだが、まさかこんなに早く再会するとは。
お互いどこのルートを走ってきただとか、道中のできごとをあーだこーだ語った。

そうこうする内にあっという間に夜になり、休息のためにしばらく滞在するMedellin初日を終えたのであった。
写真はビリヤードで空振りをする濱さんの決定的証拠写真。
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(走行ルート:El Quince→Valdivia南20キロ→Santa Rosa→Medellin)

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