何もない国・Belize

Chetumal~San Ignacia~Guatemala国境
3/14~3/17(298~301days)

ベリーズは、中央アメリカ北東部、ユカタン半島の付け根の部分に位置する英連邦王国の一国たる立憲君主制国家である。
北にメキシコと、西にグアテマラと国境を接し、南東にはホンジュラス湾を挟んでホンジュラスがあり、東はカリブ海に面する。首都はベルモパン。
人口は324,528人。(統計2010年)
(※Wikipedia「ベリーズ」の項目より引用)
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ベリーズという国自体は、当ブログで何度も紹介している石田ゆうすけ氏の名著「行かずに死ねるか!」から認識はしていた。
が、そういう名前の国が世界には存在しているという認識のみで、ベリーズには何があり、どんな食べ物があるのか、という情報は一切持っていなかった。

実は世界的に有名なGreat Blue Holeがあったり、スキューバダイビングでマナティと泳げたりと、非常に観光資源豊かな国らしいのだが、無知な私はそんな事は存じ上げないし、あまり興味が湧かない。
(※画像はWikipedia「ブルーホール」パブリックドメインより引用。)
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話をベリーズ入国時に戻す。

「果物や食べ物は鞄の中に持っていないだろうな?」というベリーズの国境管理官(というにはあまりにラフな格好。)の質問を巧みに交わした私とChungとEnidの3人は、無事にベリーズへ入国することができた。

ちなみにベリーズは英語が公用語であり、黒人の割合が全人口の約30%を占める。
スペイン語が公用語の中米にあって、少し風変りな国である。

新しい国に入国する際に、今までいた国とガラッと変わる雰囲気を感じられるのは、陸路入国の醍醐味であろう。
アラスカからカナダ、アメリカからメキシコに入国した際に私が感じたのは、まず匂いが違う、ということであった。
では、ベリーズの場合はどうかというと、「何もない」。匂いも、風景も、何もない。
Just flat、真っ平なのだ。

家も、牧場らしきものも、ジャングルも、何もない。
平原の中に一本の道が、何の起伏もなく果てしなく続いている。
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しばらく走ったところ、小さな集落が現れ始めた。
しかし、その集落もいくつかの小さなマーケットと、中華料理店が目立つのみで、本当に何もない。
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ベリーズは物価が高いと聞いていたのだが、確かにメキシコに比べれば高い。
BZ$という独自通貨を使用しており、1BZ$=約55円。
中華料理のレストランで食べたチャーハンは5BZ$(約275円)、道中に入ったレストランで頼んだカレー風味チキンは9BZ$(約495円)だった。
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地ビールをマーケットでいくつか購入したが、一本2.5BZ$。(約138円)
味は、後味がかなりしつこく独特な味がする。
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その後も進めど進めど風景に変化がない。
こうしたバス停が現れるだけでも気が楽になり、我々はよくバス停で休憩していた。
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首都であるBelmopan周辺ですら、「本当にここが首都の入り口なのか?」と言うほどに車通りは少なく、露店果物屋なんかが出ていてのんびりとしている。
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こんなにも何もないベリーズなのだが、二つ、「印象に残っているな」と覚えていることがある。

一つ目は、自転車に乗っている時に我々が挨拶をすると、人々は必ず微笑みと共に挨拶を返してくれる。
一見旅行者と地元民の普通のやり取りでしかないが、ほぼすべての人が敵意や嫌悪感もなく笑顔を見せてくれるというのは、今まで通過した場所ではなかった気がする。

ふたつ目に、銃を持った軍人および警察が全くいないことだ。
これはベリーズに入国した際にすぐ感じたことだったのだが、通常物々しい雰囲気であるはずの国境付近ですら、銃を持った軍人を一切見なかった。

そして、メキシコでは当たり前であった、強盗対策のために家や店をまるで監獄かのように金網で囲み、客とですら金網越しに対応するということも一切なかった。
ほとんどの家は外壁すら持たず、開け放たれ、のんびりとした雰囲気が漂っていた。

住んでいる人間は黒人で、話す言葉は英語ではあるのだが、私はこの何もないベリーズに、どことなく既視感と、懐かしい空気を感じた。
そう、ベリーズは日本によく似ているのだ。

私自身は、世代的に昭和中期から後期にかけての日本などは、テレビや写真越しの映像でしか見たことはない。
しかし、昭和の匂いを残す寂れた町や村は現在でもいくつか残っているはずで、そういったところにはやはり私も何度か訪れたことがある。
そうした場所は都会の様な殺伐とした雰囲気はなく、恐らく昔からこうだったのだろう、という独特ののんびりとした雰囲気を感じることができる。

ベリーズは、まさにそこで感じたものと同じような雰囲気を感じるのだ。
街灯などもなく、人々も何をして働いているのか分からない程何もないが、ゆっくりと時間が流れ、夜になれば川沿いには無数のホタルが飛び交う・・・。
決して面白い国ではないが、中米の中にあって異彩を放つ国であることに間違いはない。

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こうして私達は3日間をベリーズで過ごし、4日目にグアテマラ国境へと向かった。
国境付近では、既に家から流れる音楽はスペイン語に再び戻り、混沌とした雰囲気が漂い始めた。
人の数も車の数も増え、それまでのゆっくりした空気が嘘の様に淀んだように感じた。

我々は手続きを済ませ、大型トラックが無秩序に立ち並ぶ隙間を抜けて、グアテマラを走り始めた。
見える文字は全てスペイン語。
今までの4日間は一体なんだったのだろう?と不思議な感覚を覚えながら、私は新しい国の道路を蹴り、自転車を走らせた。
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(走行ルート:Chetumal→Barrel Boom→San Ignacia→Guatemala国境)

コメント

  1. 文章が面白い❗
    ブルーホールは行かず?

  2. ベリーズ。地理苦手だしメジャーな国しか分からないのでググってみました。
    随分と進みましたね!
    のどかな風景ですね。宿泊満喫してましたね(笑)

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