フラミンゴたちの楽園・Celestun

Celestun

Celestun(セレストゥン)とは、Meridaから東へ80キロ程、メキシコ湾に面した小さな漁村だ。
この漁村沿いは自然保護区となっており、広大な広さのマングローブ林が存在している。
Pueblaでお世話になったMariaから、Celestunのことを教えてもらい、是非とも訪れたいと思っていたのだ。
マングローブ林だけならそこまでそそられないのだが、Celestunを訪れることにこだわったのはもう一つの理由がある。
Celestunでは野生のフラミンゴが見られる、と・・・。
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Meridaから朝8時のバスに乗り、Celestunを目指す。
バス停では3時間、Meridaでお世話になっていたOmarには2時間と言われていたが、実際は4時間だった。
メキシコでは、何かを注文したりお願いしたりする際は「Manana(明日ね)」という文化なのだが、こんなにも遅れるとは思っていなかった。
バスでは後ろに座っている子どもにちょっかいを出されながら、結局Celestunのダウンタウンに到着したのは、12時を過ぎていた。

痛い尻を両手で持ち上げるようにしてバスを降りる。
バス停から降りると、すぐにメキシコ人のおっちゃんが「フラミンゴ!ボート出すよ」と声を掛けてくる。
腹も減っていたため、「昼飯でタコスを食った後に頼むよ」とおっちゃんをかわす。
流しのフラミンゴボートに引っかかる程、素人の私ではない。

フラミンゴのいるマングローブ林までいくボートは、ビーチから出ているという情報も、既に調べている。
下調べも怠らない。長期旅行者の鑑である私。
飯を食い、ダウンタウンからビーチまでは徒歩1分。
波のほとんどない、エメラルドグリーンで美しい平和な海が、障害物もなく目の前に広がっている。
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しばらくビーチをぼけっと眺めていると、さっきのおっちゃんが「タコス食い終わったか?」と声を掛けて来た。
眺めている間様子を見ていたが、どうやら個人で出している船はなさそうで、許可を得ている船のみが、マングローブへと出ているようだ。
結局おっちゃんによろしく伝え、他の欧米人旅行者たちと肩を並べて、掘っ立て小屋で出発を待つ。
郷に入れば郷に従え、というのも長期旅行者の鉄則である。

コースはまず、ビーチからマングローブ林内のフラミンゴの集まる場所へ向かい、その後マングローブ林を抜けて湧き水ポイントへ行き、同じルートを戻る、2時間のツアーだ。
(※乗り合いボートのため、6人程集まるのを待つ必要がある。私の時は、6人集合して一人250ペソ。1ペソ=5.6円、約1400円)

15分程待ち、6人揃ったところでボートへと案内される。
ちょうど6人乗りのボートで、椅子は固いがそれぞれ距離が離れているため快適なクルージングが楽しめそうだ。
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が、そんな幻想はすぐにぶち壊された。
発進してすぐに、ボートは超加速し、「海から空へ離陸するつもりか?」という程にめちゃくちゃなスピードを出す。
波のタイミングによっては、ボートが本当にジャンプする。
ボートの縁を両手で持って、ジャンプの衝撃に常に備えなければならない。
そしてその衝撃は固い椅子を伝って、もろに尻にくる。4時間のバス移動で尻はもう既にボロボロなのだ。

必死に耐える私に、恐らくアジア人が珍しいのだろう、隣のフランス人が「何でメキシコにきた?」等々、興味津々で色々聞いてくる。
ボートは今にも離陸せんとしているのだ。そんなボートの上での会話など、向かいからの風の轟音で全てかき消される。
何と質問されたのか聞くのにも大変だわ、答えたとしても「What’s?Perdon?(何?もう一回)」と何度も繰り返される。
そんなに聞くのに難儀するなら、話しかけないでほしいぞ、フランス君。

船長はというと、「ガソリンが無いからガソリンスタンドに寄っていく」と言い出す始末。
船を陸に着けている間、私が陸地にあるでっぱりをボートの上から掴まされ、流されないように耐えていた。
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肝心のフラミンゴはというと、マングローブ林に囲まれた河に入って30分経っても、一向に現れない。
これは一杯食わされたかなぁ・・・と思う事更に10分。
ボートはスピードを落とし始めた。フラミンゴが音で逃げてしまうから、という。

ここまで全くフラミンゴの影も形も見ていないため、本当にいるの?と疑っていると、上空に1匹2匹、ピンク色の鳥がちらほらと舞いだした。
フラミンゴだ。
更に1匹2匹、こっちにも3匹4匹・・・どんどんと数が増していく。
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最初ははぐれフラミンゴが上空を待っているだけだったのが、徐々に水面にも泳いでのんびりしているフラミンゴが現れ出し、数も加速度的に増してきた。
あっという間に、水面は無数のフラミンゴで覆われた。
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マングローブ林が、ピンク色の色鉛筆で線を引いて縁取ったかのように、横一線にずらっとフラミンゴが群れている。
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Celestunのフラミンゴは、食べているプランクトンの影響で、他の地域の個体よりも非常に濃く鮮やかなピンク色をしているらしい。
野生のフラミンゴなどもちろん見たことなどなかったのだが、あまりにも数が多いのと、あまりにも色鮮やかなので、ボートの上でずっと見とれていた。
ボートも全くスピードを出さないため、先ほどまでの轟音の代わりに、僕らの周りはフラミンゴの鳴き声だけが存在していた。

フラミンゴの地帯を抜けると、ボートは進路をマングローブ林の中へと向かっていく。
この日は晴れだったはずだが、マングローブ林は深く、陽が射さず、涼しい。
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マングローブ林をしばらく進むと、船着き場が現れ、ボードウォークが奥へと向かっている場所に着く。
そこで船から降ろされ、しばらく歩くことができる。
ここでは、天然の湧き水が湧きだしており、先ほどまでの林の中の濁った水と違い、非常に澄んでいる。
(※泳ぐこともできるようなのだが、私たちの組では誰も泳がなかったし、誰も泳いでいなかったため、私も遠慮した。)
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10分程ボードウォークをした後、船は再度来た道を猛スピードで引き返した。
あっという間に、出発したビーチへとたどり着いた。
ボートの衝撃で痛む尻を尻目に、バスに乗って帰路に着いている間にも、私の頭は先ほどまでいたピンクの楽園に、静かに興奮していた。

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