タコスとかいう神B級グルメ

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11月8日、僕はアメリカから陸路で国境を越え、メキシコへと入国した。
スマートフォンはおろか、携帯電話さえ持たない無計画さで旅行をしてきた僕も、流石に入国前夜は色んなことに対いて不安を感じていた。

水は飲めるのか?治安は大丈夫か?金はどこで下せるのか?そもそも言葉が分からない。

メキシコ生活1か月を超えた今、前3つはどうすればいいのか、どうなのかは大体把握してきた。
水はそこら中にあるコンビニで問題なく買える。アラスカの200キロ何もない道路よりも手に入れやすいくらいだ。
治安に不安を感じたことは滅多にない。メキシコ人はみんな親切で明るい。どんなに小さくても、集落や町に入れば必ず音楽が鳴り響いていて愉快な気持ちになる。
金は街の中心部にいけばATMがあり、ライフルを持った軍人が見張っていてくれる。

ただし、4つ目の「言葉」だけはどうしようもない。
教科書を買えばそれだけで満足して放置してしまう怠惰な僕は、出発前の日本滞在時にもスペイン語の教本を放り出してを全く勉強しなかった。
今でも「Hola!(こんにちは)」「Gracias(ありがとう)」「Donde?(どこ?」「Que?(なに?)「Cuanto?(いくら?」くらいしか喋れない。

言葉が通じなくても、尋ねれば必死に教えてくれるメキシコ人の親切さに甘え、今のところどうにかなっている。
が、1つ困ることがある。


レストランでの食事だ。

自転車旅行者である僕にとって、食事というのは車でいうガソリンに当たるもので、必要不可欠である。
また、一番の楽しみでもある。へとへとになり空腹になった体に、味の濃い料理をガツガツと掻っ込む瞬間と言ったらたまらんものである。
(ビールが一番!という意見も多々見られる。)
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そんな一番の楽しみが、レストランで言葉が通じないとどうなるか。
全く理解できないメニューにある言葉の羅列を、理解もできないのに数分間眺める。
そして悩んだ挙句、「これが何となく字数と文字面がいい感じやぞ!Esta!(これ)」というただそれだけの理由で店員に指差しでオーダーするのだ。
いざ料理が目の前に運ばれてくるまで、何が来るのか全く分からない。
何とも愚かな博打である。

もう一度繰り返す。食事は僕にとって一番の楽しみである。
娯楽である。一大イベントである。テーマパークである。疲れた体とその日の気分に合わせて、最もマッチした料理をオーダーし、盛大に祝う必要がある。
そんな娯楽に、自ら博打を挑まなければならないのだ。

メキシコという国は標高差が激しいため、場所にもよるが1000メートル以下であれば、12月現在の今でも非常に蒸し暑い。日本の夏とそっくりの気候だ。30度を優に超えていると思われる。
一度、汗だくになってレストランに入り指さしでオーダーした時に、熱々の煮込みスープが出てきた時は椅子からひっくり返りそうになった。
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今のところゲテモノ料理などはなくどれも美味しいのが幸いだが、やはりレストランで注文する際には少し緊張感を覚える。

そんな中、言葉が分からないか弱い旅行者に救いの手を差し伸べる者がいる。

タコス屋台だ。
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タコスとは、肉や野菜の具材を、トルティーヤ(すり潰したトウモロコシ、もしくは小麦粉で作られた薄焼きパン)で巻いて食べるメキシコのソウルフードである。
日本でいうとおにぎりの様な、速い、安い、美味しいトリプルスリーの料理だ。

タコス屋台とは、掘っ立て小屋の露店レストランか、移動式の屋台である。
メニューはタコスしかないか、他にあっても極限られた数しかない。
シンプル・イズ・ベスト。

そして何よりも優れた点は、具材が客の目に見えるところに置かれていることである。

オーダーから出来上がりの流れとしては、まずは肉を選ぶ。
肉はAsada(網焼きの肉。鶏?)、Adobada(マリネ肉。豚。)、Chorizo(塩辛ソーセージ)の3種類がポピュラーの様だ。
(※肉の種類数に関しては、店の規模によって違う。1種類しかない店もある。)
「Esta、Esta、Esta。(これとこれと、これ)」と指で指してオーダーすれば、目の前で焼いてくれる。
値段は大体1つ8~15ペソ。(1ペソ5.6円なので、40~90円くらい。)
そして、5分もしない内に焼いた肉をトルティーヤに乗せて、はい出来上がり。
シンプル・イズ・ベスト。
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大抵は机の上に野菜、レモン、アボガドソース、チリソースが置かれていて、「肉とトルティーヤは焼いたから、後は勝手にしてくれ!」というスタイル。大らかなメキシカンらしいスタイルである。
各々好きな野菜をトッピングして、丸め、そしてかぶり付く。
時々肉汁、ソースが指を伝ってタラタラと手首まで垂れてくるが、そんなことはお構いなし。
むしろ垂れてくる方が肉汁を吸っている証拠で、より旨いタコスであることが多い。
手も口も脂とソースでギットギトになりながらコーラをがぶ飲みし、最後にゲップ1つ吐き出して充足感で満たされるのだ。
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至ってシンプルな料理だが、シンプル故に奥が深いのか、店によって当たりはずれが大きい。

まず最低限の条件として、作り立てを出してくれることだ。
Guadalajaraのレストランに入り、タコスを注文した日の事だ。
高架下にあるレストランで、椅子も机も並べてあり一見普通のレストランだが、どうも調理場がないように見える。
「ここは客席のみで、隣接しているレストランで調理して持ってくるんだろうな」と思い、入り口前に机を置いて椅子に座っているおばちゃんに、「タコス3つね」とオーダーし、席に着いた。
席に着くや、10秒くらいでおばちゃんがタコスが持ってきたので、びっくりして入り口の方を振り返った。
おばちゃんの前に置かれている机と思っていた物は机ではなく、布が被せられた大きな籠で、そこから作り置きのタコスを取り出していたのだ。
いつ作られたか分からないもので、当然温くて全く美味しくなかった。

上記は極端な例だが、やはりオーダーしてから肉を焼くか、そうでないかは大きな差である。
肉が作り置きだと、肉汁が逃げてしまってジューシーではない。
タコスは食べている時に肉汁が零れ落ち、手が汚れる程にジューシーでなければならない
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そして旨い店とそうでない店で最も差が出るのは、トルティーヤの出来である。

あまり美味しくない店では、肉の焼き上がりの直前にちょっと鉄板に乗せて温めただけなのだろうが、トルティーヤの生地が焼け切らずに生に近い柔らかい状態で出てくる。
柔らかいとどうなるか。肉汁とソースを吸って、丸めるや否やかぶり付く前に側面が破れてしまうのだ。
そうなると零れ落ちる具材を手のひらですくって食うことになるので、惨めな気持ちになるばかりでやはり美味しくない。
(※中にはトルティーヤを2枚重ねしている店もある。恐らく破れるのを防止するためだろう。それはそれで肉厚で好きである。)

美味しい店とは、やはりトルティーヤにもしっかりと火を通している。
丸めるのに支障がなく、かつパリッといかずに柔らかさを程よく保った固さへと仕上げている。
更に手の込んだ店では、オーダーすると同時に球状の生地を手動のプレス機で平たくする所から始め、トルティーヤを焼いてくれるのだ。
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メキシコに入って3日目くらいだろうか、初めて屋台でタコスを食べた。
そのタコス料理屋はまさにその旨い条件全てを満たしていた。肉汁、トルティーヤの程よい固さ加減・・・
それから毎日昼食時分になると、タコス屋台を求めて狂った様にペダルを漕ぐようになった。
旨い店に出会った時は歓喜し、そうでない時は落胆するという、一喜一憂する毎日を送っている。
「食うまで旨いか分からないなら、それ博打じゃないの。最初言ったことと矛盾してるじゃないの。」ということに気付いたが、そんなことは知らない。

最後にもう一つ、タコスを食べる際についてアドバイスとしては、さっさと食べること。
どれだけトルティーヤがいい出来でも、やはり時間が経つと肉汁を吸って破れることがある。
タコスが運ばれてきたら、さっと自分好みに野菜を持って、ガブっと豪快にかぶり付くことをお勧めする。

メキシコに訪れた際には、是非ともこの素晴らしいB級グルメを堪能して頂きたい。
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コメント

  1. メキシコ、満喫出来てるみたいで安心しました(^^)/ タコス…めっちゃ美味しいんですね(笑)本場のは食べた事ないですが。トルティーヤって生地だったんですね!タコスとトルティーヤって別物の料理かと思ってましたよ…(^^;
    あれってフルーツポンチ?ですか?スープかな?…食事が楽しみと驚きとはね(^^;これもまた、旅の醍醐味?ですね(笑)
    言葉の不安以外はさほど不便無さそうで良かったです。今年も残すところあと少しですねー。X’mas、年越しと楽しんで下さい(^o^)v

  2. ガラスの器に入っているのはエビとチリソースの冷製スープで、もう一つは熱い鶏と野菜のスープですね。果物っぽいですけど、野菜です。
    言葉が分からなくても何とかはなるのですが、英語も含め、やっぱり話せないと損してるなぁ・・・と感じることはありますね。
    池田さんも、よいお年を!

  3. スープ美味しそうや!冷たいのも温かいのも飲んでみたいなぁ
    最近良く作るのは、レタスのスープです。

  4. はじめまして ただいま、最初から読み続けて、ここまで来ました 笑
    最新記事まで追いついたら、コメントしようと思っていたのですが、タコスが神B級グルメというタイトルに、そうだそうだ!この気持ちは節約旅行者(控え目表現)じゃないと分からない!染み入るホント神級グルメなんだよ!って、ついついここでコメントしちゃいます 笑
     わたしはバックパックで、若い時に旅してました。メキシコにはエルパソなどから入ったりしてましたが、大丈夫でした。30年近く前ですけど・・・笑
     そうそうタコス!メキシコに入った時のタコスのおいしさと腹いっぱいにできる価格に、あの油の汚さはまったく気にしないことにして、なんていい国なんだ!って思ってました 笑。ホント美味しいですよね。野菜もたくさん食べれるし、貧乏旅行者にはホントに神級の食事でした。 アメリカでの粗食の影響かもしれませんが(笑)、沖野さんのおかげで、あの時の感動を思い出しました。
     メキシコは人がいいですよね。今は経済発展もしていて、かなり安全になっているようですけど、危ないところもまだあるようですので、安全に、でも楽しみながら進んでくださいね~^^ブログ楽しみにしています。

  5. はじめまして。ブログを読んで頂き、ありがとうございます。
    当時はじめてタコスを食べた時にあまりの美味さ、安さに衝動的に、誰かに伝えたくてこの記事を書き上げました。
    ですので、こうしてコメントを戴けますと、私としては「やった!」と非常にうれしく思っております。
    メキシコ人は優しく、ご飯はおいしく、たくさんの友人ができたこともあり、この旅行中でもかなり上位にくる程好きな国です。
    現在はコスタリカを走行中で、そろそろ中米も後半戦ですが、これからも無事に旅行を続けたいと思います。
    今後とも、よろしくお願いいたします。

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