Telkwa~Prince George 7月23日~7月26日 (64日目~67日目)

みなさんはカウチサーフィンというサイトをご存知でしょうか。
ホストと呼ばれる、旅行者のために無料で自宅のシャワーやベッドルームを提供してくれる方がこのサイト上に登録しています。
旅行者はホストに交渉し、その日の寝床を確保することができる、といったサービスです。
このカウチサーフィンの自転車旅行者版で、ウォームシャワーというサイトが存在します。
カウチサーフィンは全ての旅行者に開放しているのに対し、ウォームシャワーは自転車旅行者のみ。
当然ホストは自転車旅行者に寛容で、自転車のメンテナンスに詳しい方もいらっしゃいます。
頼りすぎるのは良くないかも知れませんが、他国の文化を知るには非常に有効なツールであると思います。
以下本編。


7月23日。
7時半起床。雨は降っていないが怪しい雲行き。

朝食を取りながらこの日もこのキャビンに滞在するか考える。
この狭いキャビンに1人で滞在してネットをして過ごすのか。少しでも進み、この先待ち受けている雄大な景色の中にあるキャンプ場で2泊するのか。
後者を選び、準備に取り掛かる。バーチャルを捨てよ、旅へ出よう。
準備を済ませ、11時出発。
ちょうどキャビンの入り口を出たところで目の前を3台の自転車が通過していった。

これは声を掛けなければ、ということで1日だらけた生活を送り鈍った体に鞭を打ち、長い丘を登り切った所で何とか彼らに追いつく。

オーストラリア人(タスマニア出身)のデイヴと、
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イギリス人夫妻のデビットとサラ。
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彼らも昨日偶然出会い、一緒に走っているという。

デイヴはバンクーバーからシカゴまで、デビットとサラはアンカレッジからサンフランシスコまでの旅行とのこと。
この日はTelkwaから50キロ程先にある町、Houstonまで行くという。

しばらく会話をしていると僕らが来た方角と真逆の方から女性が2人、これまた自転車旅行者がやってきた。
彼女達はこの日が自転車旅行の初日だそうで、40キロ先の町ヒューストンを出発してアラスカを目指すとのこと。
丘の上の小さなレストエリアで、長期自転車旅行者が6人も揃うことなど滅多にない。
話に花が咲く。
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ちなみに、この丘の名前はGrizzly Hungry Hill。
2005年に体重460キロのヒグマがこの場所に出没し、そしてハンティングされたとのことでこの名前が付いたそうだ。
ヒグマも腹を減らせているかもしれないが、自転車旅行者も常に腹ペコである。

Hungry Hillからは誰が言い出したわけでもなく、自然とデビット、デイヴ、サラ、僕の4人でパーティを組んで走り出した。
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元来、僕は自転車旅行は1人で楽しみたい。
というのも、自転車を漕ぐペースは人それぞれ違う。
僕は短気なので、人とペースを合わせることができない。
それでも短期的であれば、パーティを組んで走るというのは刺激的で非常に面白い。

また、彼らはベテラン自転車旅行者なのでそこら辺も心得ているのだろう。僕らは時には距離を取り、好きな場所で止まり、それぞれのペースでサイクリングを楽しんだ。

14時頃にHoustonに到着し、15時にはこの日の宿となるShady Rest RV Parkに到着。
RVパークは1人につき料金が発生するのではなく、1サイト当たり何ドル、という形態である。
このRVパークは1サイト24ドル。
2人までシェアできるとのことだったので、1人12ドルで宿泊できる。
デビットとサラ、僕とデイヴでそれぞれシェアをした。
また、こちらの管理人の方のご厚意で、キャンプサイトではなく芝生の上で好きな場所にテントを張っていいことになった。
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テントを張った後はそれぞれ好きなことをしつつ、コミュニケーション。
デヴィットとサラは過去に8か月間、南米大陸をウシュアイア(南米最南端の町)まで縦断している。
彼らから現地の情報と、写真を見せてもらう。
やはりウユニ塩湖には彼らも訪れており、素晴らしい景色だった。
デイヴは出身地であるタスマニア島の写真を見せてくれた。
未舗装路のトレッキングコースを通る旅だったそうで、砂漠のような景色だった。

7月24日。
7時起床。少し雨が降っている。
朝食を取り、準備をしている間に雨は止んだ。
8時頃、デイヴが先に出発。15分程遅れて僕も出発。デビット夫妻はまだ準備中のようだ。

途中までほとんど下り坂だったが、しばらくしてえげつない激坂が目に入る。
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名前は6Mile Hill。
デイヴと二人で「3マイル登りで、3マイル下り坂だといいね」といい笑い合う。
※1マイル=1.6キロ
小休止後、ヒルクライム開始。
角度がきつく、かなりしんどい。暑さも相まって息が上がる。
それでも足を付くことなく漕ぎ続ける。
上り坂は1.5キロ程で終わり、頂上で再度小休止。
遅れてデイヴも到着。
「一度も足を付かなかったぜ」「俺だって!」と言い、お互い称えあう。
ここからはずっと下り坂。
風景は田園風景が広がっている。

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14時頃Burns Lake到着。
Visitoer Centerで時間を潰しているとデビット夫妻も到着。
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旅行者が自分の出身国にピンを挿している世界地図を見て盛り上がる。
日本出身の旅行者は最近では僕だけのようだ。ピンの挿し後があるので、過去にはいたようだが。
イギリスは流石にピンの数が多い。タスマニアはデイヴが初めてだった。

この日は湖の畔の無料のキャンプ場で宿泊。
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それぞれ買い出しを済ませ、晩ご飯にうどんを作っているとデビット夫妻からビールの差し入れ!
3人はどんどんビールを開け、僕も釣られて4本も開けてしまった。
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キャンプ場で仲間と食べるご飯、そして酒ほど最高なものはない。
彼らは翌日Burns Lakeの南側を通るルートを、僕は北側を通るルートを取るため、この日が一緒に食べる最後の晩ご飯。
酒が良い具合に回り、この日は深い眠りに就くことができた。

7月25日。
6時半起床。デイヴは既に朝食を取っている。
彼らは8時前に出発。連絡先を交換し、それぞれの旅の成功と無事を願い、ハグと握手をして別れる。
遅れること20分程。僕も出発。
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道はしばらく下り坂。目の前に誰もいない開放感と、誰もいない寂しさが共存している。

65キロ程走ったところで昼食。
デイヴとデビット夫妻と行動食(おやつ)の話で盛り上がったのだが、僕は袋いっぱいのクッキーとドライフルーツを常備している。
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特にクッキーは手放せなく、色が青色ということもあり、僕の自転車の名前はクッキーモンスターと名付けられた。
デイヴはヨーグルト味のホワイトチョコ、デビット夫妻はミルク味のホワイトチョコ。
行動食はそれぞれの個性が出るため非常に興味深い。

1時間程で再出発。
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途中、以前見た貨物列車が再度目の前を通過する。
行き違いにはなるが、この日は自分のスピードメーターを見ながら距離を測ってみた。
結果は、最低でも1.5キロはある。カナダという巨大な国では、この電車が重要な物資供給手段なのだろう。

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この辺りからトラックに注意の標識が増えてきた。
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初めはえらく直接的な標識だと思ったが、本当に尋常じゃない量のトラックが通る。

16時頃Vanderfoohに到着。
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手入れが行き届いた芝生の中にVisitor Centerがある。

ここでWifiが使用できたので、先日ウォームシャワーでコンタクトを試みていたホストから返信がないか確認してみる。
しかし返信無し。電話も出ないので留守なのだろう。
18時頃になっても返信がなく、こうなったら体当たりで行ってみて、留守だったらキャンプ場に宿泊しようということで出発。

Visitor centerからは少し離れた場所で、坂道もあり息を切らしながら向かう。
家の前に着くと、窓から人が見えた。向こうもこちらに気付き、手を振っている。
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彼女はジョリーン。
ちょうどこの日の夕方に旅行先のバンクーバーから戻ってきたばかりで連絡が取れなかったそうだ。
旅行帰りで疲れているだろうにも関わらず、僕を笑顔で迎えてくれた。
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彼女は僕にベッドルームと暖かいシャワーを与えてくれた。
そしてご主人のジョンも帰宅し、晩ご飯まで与えてくれ、一緒に食事を楽しむことができた。
彼女達は自転車旅行はしたことがないが、過去に複数の外国での在住経験があり、そこで現地のホストファミリーに大変お世話になったという。
そして、自分たちもホストとして、受けた恩を返したいとのことで、ウォームシャワーでホストを引き受けているとのことだった。

彼女達は英語があまり得意ではない僕のために、ゆっくりとシンプルに話しかけてくれ、僕は非常にリラックスして楽しい時間を過ごすことができた。

翌日ジョンは仕事で早く家を離れるため、恐らく朝には会えないとのことで握手をしてお礼を伝える。
こうしてキャビンに続き、またも僕は暖かいベッドで休息を取ることとなった。

7月26日。
7時起床。やはりジョンは既に仕事に行ってしまっていた。
ジョリーンも既に起きて朝食の準備をしていた。
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テラスの素晴らしい景色の中、朝食にトーストと目玉焼き、コーヒーを頂いた。
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さらに食後は庭園のイチゴを摘ませてもらい、しこたま頂いた。

これまでいくつもの親切を受けてきた。
その度に何故カナダ人がなぜ親切なのか、ということを考えてきた。
それは、宗教的な理由が大きいのではないか。

2001年の調査によると、カナダの人口の77パーセントがキリスト教徒である。
※16.5パーセントが無宗教で、他はその他の宗教。
(出典:wikipedia カナダの項目)
ジョリーンとジョンも敬虔なクリスチャンである。

僕は無宗教だが、大学はキリスト教系の学校だったので、多少教義は知っている。
キリスト教には「隣人を自分の様に愛しなさい」というイエスの教えがある。
※ちなみにイスラム教にも「旅人をもてなす心を持ちなさい」という教えがある。

彼らの家に招かれ食事や生活を共にすると、宗教が生活に根付いているのがよく分かる。
日本では宗教というとあまり良いイメージを持たない人も多くいると思うが、カナダでは宗教が良いように作用しているのではないか。

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ジョリーンと犬のジュノに見送られ、10時に出発。
この日も日差しが強く、暑い。

相も変わらず牧草地が続く。
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しばらくして路肩が狭くなってきた。
木材を運ぶトラックの量はますます増えてきた。
十分な隙間を空けずに通過していくため、かなりの恐怖を感じる。
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左下が自転車。このサイズのトラックが通過してきたらたまったものじゃない。

16時頃、Prince George到着。
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着いて驚いたが、予想以上の大都市。
アンカレッジを除けば、これまでで一番人口の多かった都市はアラスカのフェアバンクスで約3万人。
プリンスジョージは人口8万人程の都市。

この都市では手に入らないものはないのではないか、という程に巨大な商業施設が立ち並んでいる。
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日本でお馴染みのコストコには車がぎっしりと停まっている。

都市は3セクション程に分かれているようで、各セクションの間には急勾配な坂道がある。
何はともあれ都市の中心部にあるVisitor Centerへと向かう。
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プリンスジョージのビジターセンターの閉館は16時半。
ぎりぎりに着いたにも関わらず、僕を温かく迎えてくれ、自転車を館内に止めさせてくれた。

都会であることは予想はしていたので、事前にウォームシャワーでコンタクトを試みていたが、返信はなかった。
並行してカナダ在住の日本人用のネット掲示場にて庭でのテント設営の許可を求めていた。
こちらは返信はあったものの、許可を得るには至っていなかった。

閉館時間はすぐに訪れ、ビジターセンターを出なければいけなくなった。
外に出て途方にくれていると、一人
のスタッフが戻ってきて、
「Wifiを使いたいなら中で使ってもいいよ」と言い、鍵を開けてくれた。

しかし、結局19時くらいまで粘ってみたが芳しい結果を得ることができなかった。
諦めてキャンプ場へ行こうとするも、ビジターセンターからキャンプ場までは12キロ。さらに急勾配の坂道まである。
仕方ないよなぁ、と諦めて礼を言って去ろうとすると、
「僕の車で送っていくよ」と言い、なんとキャンプ場まで送ってくれた。
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親切にも程がある。おかげでキャンプ場にはすぐに到着した。
「ビジターセンターは8時半に開くから、また明日もおいでよ」
と言い、僕をキャンプ場に降ろして彼は去っていった。

プリンスジョージでは食料確保と自転車屋を見たかったので、2泊分の料金を支払い、夕飯。
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人の親切をたらふく受け、飯をたらふく食い、この上なく幸せな夜を過ごすこととなった。

コメント

  1. カナダの人達は親切やね。
    お返しにこちらでも人に親切にするわ(^^)v

  2. カナダの人達は親切やね。
    お返しにこちらでも人に親切にするわ(^^)v

  3. カウチ?ウォーム?色んなシステム?って言うんですか?あるんですねぇ(._.)
    でも、なんであんなに優しく親切にしてあげられるんでしょうね!キリスト教は確かに分け隔てなく親切。てイメージありますもんね。旅人と言うか旅行者…冒険家?夢を追いかける人?果たして店長はどれなんですか?ねぇ(^^)色々な人に親切にしてもらってパーティー組んで走って。誰もが出来るとは限らない経験ですよね!
    おやつ…美味しそう(笑)

  4. もし分かるようであれば、Warmshowerでホストになってあげて。
    自転車旅行者を家に泊めてあげるサイトです。

  5. 日本で自転車で旅行していると変人扱いされますが、こちらでは温かく迎える文化があります。そこら中に自転車に大量の荷物を持った人間がいます。
    僕は冒険者なんて大層なものじゃなくて、ただのサイクリストです。こちらに来て気づきました。自転車に乗ったただの旅行者ですね。

  6. ただの旅行者ですか?んー。自転車に乗った旅行者とはちと違うような…その通りのような。あたしも20年若かったらやりたかったですよ!無理かな…(-“”-;)

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