Whitehorse~Carmacks ユーコン川下り準備 23日目~26日目(6月12日~6月15日)

6月12日。 朝起床し、クロンダイクカヌーイングレンタルスへ向かう。
こちらは日本人の櫛田さんが経営されているカヌー・カヤックのレンタルショップ。
前日にビジターセンターで日本語のパンフレットを拝見し、お邪魔した。
櫛田さんはホワイトホースで10年以上レンタルのお仕事をされており、ユーコンで川下りをするにあたってのアドバイスを沢山頂いた。
①カヌーとカヤックでは、カヤックの方が初心者には扱いやすく安全。
(カヌーは風・波の影響を受けやすく転覆の可能性が上がる。)
②ユーコン川を最大限楽しめるのはカヌー。
(カヤックは荷物の積載量が少なく、足も伸ばせない程狭い)
③ルートは2つ。テスリン川を下るか、ユーコン川を下るか。
※これに関しては後述に違いを記載。
①と②について、僕はカヤックの経験はあるが、修学旅行で日帰り程度。カヌー経験はない。
上記のアドバイスを踏まえ、僕はカヤックを選択した。
プロの方が「初心者がカヌーでユーコン川を下るのは非常に危険だ」と仰ることを、素直に受け止めた。
③のルートに関しては、僕はユーコン川を選択した。
スタート地点のホワイトホースからゴール地点のカーマックス300kmの距離。
ルートは上述したように、テスリン川を下るか、ユーコン川を下るかの2択。
テスリン川を下るためには、ホワイトホースからスタート地点まで水上飛行機で飛ばなければならない。
確か$290だったと思う。
費用は高いが、比較的安全で、ずっと川を下ることができる。櫛田さんはこちらをお勧めされていた。
ユーコン川を下る場合、ホワイトホースの市街地から出発できるため、飛行機の費用は発生しない。
ただし、出発してすぐ30キロ程でLake Laberge(ラバージ湖)を越えなければならない。
この湖が非常に危険だという。
全長50キロ。風が強く、波が立つ。過去にはカヌー観光客の死者も出ており、その昔には蒸気船も沈没している。300kmの川下りで、そのうち15%程がこの湖と考えると、その大変さが少しご理解頂けるかもしれない。
非常に危険なことは承知したが、やはりユーコン川にこだわりたいとの思いからユーコン川を下ることに決めた。
赤色が僕が通るルート。緑色がテスリン川のルート。途中で合流し、一つの川となる。
画像で見ると、ラバージ湖の大きさがご理解頂けるだろうか。
ちなみに水曜どうでしょうでは、大泉洋とミスターはラバージ湖の終わりをスタート地点、リトルサーモンをゴールの160km区間としていた。
費用は$350程。 食料他必要経費は別途必要。僕で総合計500ドルくらいでしょうか。
川下りの話はまとまり、6月15日を出発日として僕はクロンダイクカヌーレンタルスでお世話になることに決めた。
櫛田さんにはカヌー以外のお話しもたくさんして頂き、準備期間中も川下り後も非常に良くして頂いた。
後は一人で行くか、誰かペアを見つけて一緒に行くか。
僕はビジターセンターの掲示板に「日本人ペア募集」の張り紙を貼り、自分の準備を進めながら3日間待ってみることにした。
6月13日~14日。
食料品その他必要な物の買い出しをする。
※価格調査の結果、ホワイトホースではSuper Storeが最も安い。
余談だが、アメリカ、カナダではセルフレジが広く普及しており、品数が少なければわざわざレジ待ちの列に並ばずにすぐに会計を済ませられる。
僕は日本では販売の職種で、少ない人員で店舗を回すことを理想とする会社に勤めていた。
僕は常々、効率化を図るならセルフレジにすべきだ、と思っていたのが、客の立場としてもこのシステムはぜひ日本でももっと普及してもらいたい。
食料品は以下の通り。
牛肉・・・ブロック1㎏(生肉を購入し、塩漬け処理をして長期保存処理を施した。)
肉類缶詰・・・8個
米・・・2㎏
即席めん・・・10袋
ソーセージ・・・7本
ニンジン・・・4本
ジャガイモ・・・4個
玉ねぎ・・・5個
ベーグル・・・12個
サラミ・・・54g(薄切りで10切れ)
調味料・・・塩、胡椒、醤油、サラダ油
水・・・9リットル
粉コーヒー・・・1瓶
クッキー・・・3箱
ポテトチップス・・・2箱
モッツアレラチーズ・・・1個(グラム数不明)
その他・・・ナプキン、ジップロック
食料は8日分と計算し、購入した。本来予定から2~3日分余分に持つのがベストだそう。
その他装備として、10リットルと35リットルの防水バッグをアウトドアショップで購入した。
これはレンタルも可能だと思うが、その後の自転車旅行でも役に立つので購入にした。
装備品は以下の通り。
・上記食料品
・テント、グランドシート
・寝袋、シュラフカバー、マット
・シングルストーブ、調理器具
・ベアスプレー
・着替え3日分、防寒フリース
・コンパクトデジタルカメラ、一眼レフカメラ
・ウクレレ、ハーモニカ
カヤックは荷物の積載量が少ない。上記の装備品で結構いっぱいいっぱいだった。
(カヌーは積載量がもっともっと多い。酒飲みの方はカヌーじゃないと持って行けないです。)
終わってからの感想として、 着替えは一切しなかったので、その分をもっと食料や釣り道具に回してもよかった。
ジップロックは個別単位で防水することができるので、大きいサイズの物を一箱買っていると絶対役立ちます。
後、万が一転覆して救助を待たないと行けない場合に備え、ライター、ナイフ、ベアスプレーは絶対に常に身に着けておくことをお勧めします。
ラバージ湖を抜けてからは流れがあって暇なので、時間を潰せる楽器やスケッチ用の色鉛筆等はあるといいかも。
6月15日、出発当日。
川沿いの茂みに立てていたテントを畳み、シャイと一緒にカヌー会社まで行く。
シャイはブラジル人の旅行者で、僕がホワイトホースに着いた初日に出会った男だ。
彼は先日ブログで紹介したサトル君と一緒に、自作イカダでテスリン川を下る。
僕と彼は4日間、一つのテントで寝泊まりし続けた仲で、別れの日に見送りにきてくれた。
前日の夜、テントの中で「川下り中暇になるから、小さいギターが欲しいんだけど、楽器屋さん知らない?」 と聞いたところ、「俺のウクレレをやる。」といって、彼は自分のウクレレを僕にくれた。
シャイのウクレレの腕はピカイチで、前日にビジターセンターで彼がウクレレを引きながら歌を歌ったところ、瞬く間に多くの人が彼にチップを与え始めた。
その内に地元のバンジョー弾きのおじさんが加わって演奏比べになり、最終的には彼らの周りにカメラを構えた人垣ができて取材のようになってしまった。
彼は最後、ウクレレの裏にサインをくれ、「もしこのウクレレをナオも誰かにあげるなら、サインしてあげろよな」 と言い、さよならを告げて去っていった。
彼は決して裕福な旅行者ではない。靴は路上で拾った物、ご飯も教会が運営している施設で得る等、金は全くない。
それでも、いや、そういう暮らしをしているからこそ、自分も無償で人に物を与えられるのかもしれないと、僕は心を打たれた。
11時ごろ、イカダ作成中のサトル君に別れを告げに行く。
結局彼らは2日後の17日頃に出発になるようだ。
12時頃、櫛田さんの車に乗ってホワイトホースのダウンタウンの川沿いに着く。 そこで簡単な操作説明を受け、いざ出発!
出だしは全く漕ぐことができず、左に右に揺れながらゆっくりと岸を離れる。
後ろで櫛田さんが大きな声で何か指示を出してくれるのが聞こえたが、必死で何を言っているのかは聞き取れない。
川沿いは遊歩道になっているため、多くの人たちが昼食や散歩を楽しんでいる姿を眺めながら、カヤックは僕を乗せて川を流れていく。
次第に人の姿も見えなくなり、建物は姿を消し、川と林と空だけの景色となる。
不安はありつつも「まぁ、自転車でも一人だしなんとかなるさぁ」 という感じで、一日目が始まった。